評価:★★★★☆ 4.1
高校三年生の太郎は、これと言った特技もないごくごく平凡な青年だった。
優秀な兄姉にコンプレックスを抱え、思春期真っ只中の心が邪魔をして家族とも上手くコミュニケーションをとれずにいた。
やりたい事も特別見つけられずにいた太郎が進路に悩み始めた時、太郎は友人の助言を受け小説家を志す。将来の夢を見つけ、いつになく希望に満ちている太郎の前に現れたのは、何とも緊張感のない不思議な男だった。男は太郎にこう告げた。「俺は死神のジン。君、本当なら今朝死ぬ予定だったんだよね」
予定外に生き延びてしまった太郎の元に彼が姿を見せたのは、帳尻を合わせる為だったと言う。しかし風変わりな死神・ジンは、太郎に条件を出した。
【続きが気になるから、書きかけの小説を半年以内に完結させて。それを俺が気に入れば、君が死ぬはずだった予定は帳消しだ。もしも、俺が気に入らなかったその時は……】
あまりにも適当すぎるおかしな死神に目をつけられた哀れな高校生、太郎の運命は……?
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象
命が助かる条件は、「死神ジンの気に入る小説を書くこと」。恐ろしく緊張感のある執筆活動ですね。文字通り命がけです! 私なら、こんな過酷な条件で書くのは無理です(笑)こんな大ピンチにハマってしまった主人公の怒りとか焦りという心境。それが、豊かな表現ですごく伝わってきます。無気力に近かった主人公が、死を前に心根を変えていく、というのはとてもいい骨子だと思います。命を賭けた成長と小説のチキンレース、太郎君は逃げ切れるのか、死神に追いつかれるのか?
物書きの皆様、小説を書こうと志したきっかけはなんでしたか?読者の皆様、家族との関係は上手くいっていますか?これは、家族にコンプレックスを持つ、吸血鬼に憧れる少年、太郎が小説家を志し、そこから周囲の関係を変えていく物語です。ただ、人生はそう上手くはいかないもので……彼の前に立ちはだかったのは家族の反対でもなく、クラスメートからの差別でもなく、なんと死神!?ジンと名乗った男に書きかけの小説を気に入られた彼は、半年間の猶予を与えられます。迫り来る寿命にどうすることもできず、小説を書き進めることになった彼の運命とは!?心を抉るようなリアリティと、死神との非現実なやりとりが絡み合って生まれる、ふしぎな物語が綴られていきます。この物語が完結するのが先か、それとも太郎の物語が完結するのが先か、あるいは太郎の人生が終わるのが先なのか……?続きがどんどん気になっていく良作です!
しっかりした構成と文章力 不思議な世界観に ついつい引き込まれて 一気によんでしまいました。 やる気のない平凡な高校生 太郎君と、死神ジンとのやりとりも、とても自然で、緊張した場面の描写や、ユーモアにとんだ豊かな表現力に テンポよく読み進むことができました。 太郎君の、「死」までのカウントダウン。回避することができるのか?! 目覚めた彼の特技の妄想癖が、才能として開花するのか これからの展開が楽しみな作品です。