評価:★★★★☆ 4
妙なことにその街の地図は、ど真ん中がほぼ真四角に塗りつぶされていた――。
元カメラマンのロッシュは、旅の途中で立ち寄ったミロンズタウンが秘める謎に迫ろうと一件の屋敷に居候することになった。
屋敷の主であるモートン氏は言う、「そこにあったのは曰わくつきの古屋敷……獰猛な『人食い屋敷』だ」と。
人形のようにかわいらしいくせに妙に強気な少女セイリードは、今にも泣き出しそうな顔でロッシュに告げる。
「夢ならいいよね……全部夢ならよかったのに――」
一方その頃、遠方の都市グレナンからは秘密組織《ブラック・ドッグ》に所属する青年ファーディンが、失踪した女の捜査でミロンズタウンへやって来ていた。
好奇心過剰病のロッシュとボロドレスを纏ったツンデレ少女セイリードによるホラー×ファンタジーな話です。(以前個人サイトで掲載していたものです)
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2016/06/12 レビューを書いて頂きました。
ありがとうございました!=====
イラスト:月磨
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:ダーク
展開:未登録
キザで、口が悪く、己の欲求に忠実な凡そ感情移入ができないような男の一人称で世界が始まる。ホラー要素が出るまでが遅く、物語のキーワードに繋がりそうなものが散見されるため、先の主人公の心情と重なって物語の出だしの魅力が薄い。だが、物語がゆっくりと加速を始めると、読む手も引きずられるように進むだろう。感情移入ができないような男が巻き込まれる世界は一人称でありながら、どこか映画を見ているような錯覚を覚えさせる。好奇心が仇となり、不可思議な世界に迷い込む。ありきたりな話かもしれないが、キザで、すかした男が悶える様は必見。