誰から見ても完璧な優等生、本田壮人。そんな彼の悩みは、自分の存在価値が分からないこと。
閉塞感を抱えながら過ごしていた壮人は、高校入学をきっかけに自分を解放しようとする。
今までの人生で一度も逆らったことのなかった父の反対を押し切って、学区外の高校へ進学を決めた理由は父の檻から出て自由になること、それと、家族を再生すること。
そんな壮人を支えるのは人生を通して唯一の理解者である双子の妹、有里。言いたいことははっきり言う気の強い彼女と学校生活をともに過ごし始めた壮人。高校生活の中で幼馴染みの親友を持つ変わり者の同級生、継亮や日陰を歩きながらも人生を楽しみ、心から幸せそうに微笑む先輩、睛摩に出会う。有里に似た継亮の気の強さや自由さ、自分の弱さを認めて前に進む睛摩の生き方に憧れながらも、変われない自分をもどかしく思う毎日。
自分には手に入らないものばかりをもつ周囲の人たちの中で、壮人は少しずつ変わり始めた。人に心を開くことで自分を解放し、存在価値を見つけようとする。
その一方、プライドが高く、家事も仕事もそつなくこなす、誰から見ても完璧主義者、壮人の父・本田有司。彼の悩みは自分の人生の目標が見つからないこと。
悩みを相談できる唯一の相手は時折夢枕に立つ亡き兄。悩ませるのは今でも愛しているのにうまくいかない元妻、人より大人びて自分から離れていこうとする息子、気が強く天真爛漫で掴みきれない娘。歩む方角さえ見失った人生の中でひとつの事件が彼の周囲を変え始める。
自分より元嫁を可愛がる両親、しっかり者の息子と娘、自分を目標だといってくれる若者。たくさんの人に支えられながら、有司は少しずつ迷路のような人生の道を進み始めた。現実を受け止めることで前に進み、忘れていた夢を思い出し、人生の目標を定めようとする。
家族を再生したい。家族みんなで楽しく夕食を囲む家族になりたい。
目標は同じなのに、互いにそれを知らず、すれ違い続けるふたり。
崩壊した家族の中で、人一倍家族に憧れながら過ごすふたりが家族を再生しようと奮闘するひと夏。
“家族みんなで楽しく夕食を囲む”
ただそれだけのことに何よりも憧れ、それを大切で、幸せなことだと思っているふたりの夢を叶えるための半年の過ごし方。
家族の運命は、如何に?
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