評価:★★★★☆ 4.4
※1から書き直し(新規再構成)中でこちらを更新する予定がないため、完結という扱いにしております。
どうして、理解できなかったのだろう。
確かにあの時、家族だったはずなのに。前触れも法則もなく現れる幼子。彼らは、出現した場所にいた相手の一人を《親》とし、非常に強い影響を受ける。人格が完成する頃、己の性質を反映した異能をひとつだけ発現する、不思議な存在。
彼らは突如天から降りてきたように現れるため《天使》と呼ばれていた。いじめによる事故で《親》が死亡した少年。親はいじめグループを許す内容の遺書を残す。異能が原因で《親》が死亡した元ニート青年。親は幸せに死んだ。
《親》であった人間が理解できない彼らは、鬱屈した思いを抱きながら前へ進もうとする。進むとはなんなのかすら、わからないままま。(改稿したものを新しく書き始めました→還:天使の血管)
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:現代
舞台:未登録
注意:全年齢対象
ある日突然現れる子供。人はそれを「天使」と名付けた。外見も心も人間とは変わらない。ちょっぴり不思議な力を持っているだけ。ところが、その不思議な力のせいで時には忌避され、虐げられる。白河鳩は、《親》が若くして命を落とすこととなった理由を求めていた。《親》である彼女の本当の姿を知っていくうち、己の無知を痛感する。人のむごさと優しさを知ることで、鳩はどのように変わるのか。「天使」たる己のルーツを辿る旅路は、まだ始まったばかりだ――。
天使という人の姿をした、人でないもの。形は同じでも思考は違うし、特異な力もある。それが人の中に交じって生活している世界。それも個性の一言で片づければ平和に終わるのですが、そうがいかないのが現実というもの。このレビューを書いている今現在の章では、気になっていた「集団から外れた者への攻撃」を主軸にして話が進んでいます。現実には異能など存在しませんが、それでも集団から外れれば途端に有形無形の暴力に曝される。異能ともあればさらに激しいものになるはず。もちろん、そんな醜い事ばかりが現実ではなく、優しい現実もちゃんとあります。そしてそれもきちんと書かれている。清濁共に丁寧な文章、物語で書き込まれており、きっとあなたも引き込まれるはずです。
この物語は「選択」や「行動」することに悩んでいる人に読んでもらいたい話である。登場人物は皆、思い悩み、考え、何とか最良の行動をしようとする。しかし、世の中が全て自分の思い通りにはならない。だから「選択」をする必要がある。そしてこの話の中で「選択」も「行動」もしなかった者は破滅を迎えた。登場人物の一人、幸助はその姿勢を嫌悪していた。例え、自分の望む結末にならなかったとしても、「選択」しないということは出来ない。自ら「選択」しなかったのに、人の「選択」に文句を言うことも出来ない。だから登場人物は「選択」するために思い悩む。ベストではなくとも、ベターな結末を掴み取るために。もし、このレビューを見ている人の中で「選択」することを恐れている人がいたら、この作品を是非とも読んで欲しい。彼らの「選択」を見届けて欲しい。
地上に現れた天使達の姿は人間と同じだった。荘厳な翼を持つわけでもなければ、頭上に光の輪を抱いているわけでもない。ただ彼らは「異能」を持っていた。人と変わらぬ容姿と人間よりも人間らしい内面を持つ彼らは、その異能が故に様々な運命に出会っていくことになる。天使よりも天使のような人間や誰よりも人間らしい人間。それぞれの在り方、それぞれの運命が螺旋のように絡まっていく中、その中心にある謎が少しづつ明らかになっていく。 この物語は、人の美しさだけでなく、人の醜さを、人間らしさを描いたものだと私は思う。だからこそ、読むものの臓腑に切り込むような鋭さと、包み込むような暖かさを両立しているのではないだろうかと。 そんな物語を描き出すのは、室木柴先生の繊細で無礼な文章。一見難解な物語を、読者にすんなり読ませてしまうのは、先生の手腕あってこそ。もし、真に人間を描いてみようと思われるなら、必読の作品です。
ある日、なんの前触れもなく人間の前に姿を現す『天使』という存在。彼らは一人の人間を親とし、育つ。人間の赤子と変わらぬように。けれども、彼らは自分達がどこから来たのかも知らない。永遠に天涯孤独なのである。奇抜な設定でありながら、人間の生の捉え方――心を、繊細に描き出されています。幅広く個性豊かな登場人物達は、謎めいていたり、自己愛が激しかったり、一人の人間としての芯の強さを持っていたり、それぞれが生き生きと動いています。それが物語をより複雑に、奥深く見せます。生き方も立場も全く異なる二人の『天使』。彼らがどんな答えを得、そしてどんな生き方を選ぶのか。文学好きな方だけでなく、それ以外の方にも是非読んでもらいたい作品です。
普遍的な人間社会をベースとした世界観の中に、溶け込んだ天使という存在。そして、天使達に付随する親の概念。二人の天使にスポットライトを当て、描かれる本作の中で彼らが交錯して紐解かれるは一人の少女の真実。空虚、がらんどうな存在として――或いは、茫漠として霧がくした謎めいた抽象性を伴った人間像をもって読者に語られる「佑」という少女。そんな彼女の秘密がパズルのように組み上がり、そして描き出される真実とは――?繊細かつ丁寧な心理描写は人物の心を巧みに映し出し、ふと立ち止まらせる言葉は読み手の心を共振させる鏡にもなる。ガラス細工にも似た壊れやすい儚さを伴って、緻密に織り込まれた「心」の物語が伝えるメッセージは貴方にもきっと、届くはず。確信をもってここにお勧めする。
過酷ないじめを受けながらも、彼女はなぜ平然としていたのか。殺されると分かっていて、彼女はなぜ死を受け入れたのか。「親」である佑の真意を求め、彼女の友人を訪ねる、「鳩」。夢を見せる力によって、追い詰められた「親」を「安楽死」させてしまい、人間に埋もれて生きることを選んだ、幸助。二人の天使の物語は、やがて一点で重なり合う。何の希望も持たず毎日をやり過ごしていた幸助が、友人に載せられて始めた夢セラピーの店を、鳩が訪れることによって。ルーツである「親」を失い、自分が何者なのかも分からぬまま、運命に弄ばれる彼らの姿は、作者の細密で洗練された描写によって見事に再現されている。佑を飲み込み、そして今も幸助を捉えている優しく穏やかな絶望。果たして彼らに救いは、そして希望はもたらされるのだろうか。加速する物語からは、ますます目が離せない。
まず、二章までは絶対に読んでください。そこまで読んで、何かを感じた方はきっとはまると思います。ネタバレになるので、詳しくは言えないのですが、哲学的な、不思議な魅力に満ちた作品です。 ヒトの心の在り方、幸せとは何か、存在の意義とは何か……そういったものを、考えさせてくれました。シリアスなお話ですが、それほど小難しくもなく、無意味に重くもないです。読みやすい文章でもありますので、試しに読んでみてほしいです。 うまくレビューをできず、もどかしいです。