評価:★★★★☆ 4.2
魔獣との長い闘争の末、人の領域から魔獣を追い出した人類。しかし平和の水は未だ遠く、人類は戦火と屍の上に文明を築いてきた。
人と魔獣の世界を別つ境界線、〝人界線〟抱える境界都市ランダルマで、異端として追われる立場である〝アルケミスト〟である事を隠して薬屋を営む青年〈アベル〉の元に、ある日一人の少女が訪れる。
少女は外界に突如現れた正体不明の〝禁足地の魔獣〟の討伐に、渋るアベルを強引に連れだした。
外界に出るやいなや亜人王から襲撃され、息をつく間もなく別の魔獣に襲われ、野営地を焼け出されるアベルと少女。その道中で、アベルは少女がリンスティール王国の第八王女である事を知る。アベルたちはレナエルの私設騎兵隊〝サンクション〟の部隊長であるリズ、ギリアム、アーリィ、トニスと合流する。そしてリズ達から、レナエル敵対する勢力の策略により、帰る場所を失ったことを知らされた。アベルもその策略に巻き込まれ、魔獣の跋扈する外界から人界線を越えて人の領域へ帰る術を失ってしまう。
一時的に、外界に構えられたアルケミストの隠れ里に身を寄せる六人。そこへ火竜、サラマンダーが襲来する。禁足地の魔獣の正体とは、その竜の事であった。
戻ることは叶わず、進む先には伝説の中の伝説たる竜が咢を開いている。しかし、ただ座していても状況は好転してくれない。アベルたちはこの窮地を脱するべく、たった六人での竜討伐を決意する。
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
この作品は王道ファンタジーである。これ以外に語ることがあるだろうか?いや、ない。王道、それはテンプレート、定石とも言うことができるだろう。未開の地、人智を越える化生。厳しいくも美しい世界を生きる人々。ファンタジーの象徴とも呼べるモンスター、ドラゴン。胸躍り、心が滾る。展開?描写?多くを語る必要はない。読め。そうすれば分かる。
昔懐かしい……そう言ってしまうと語弊があるかも知れませんね。 しかしこの作品は、王道を『使い古されたテンプレ』ではなく、見事に『一つの世界』として構築しています。 軽く、あっさりと。 そんな小説が好まれる中で、真実良質なファンタジーを読みたいなら、この小説を読んでみて下さい。 ストイックに、しかし読者を楽しませるために。 計算し尽くされ、それを読者には感じさせずに夢中にさせてくれる。 白笹さんが描き出したのはそんな物語です。 主人公達の旅路を、あなたも共に歩み、その選択を見届けて下さい。 読み終えた時、胸に響く感動がそこに待っています。
人と人外のものを別け隔てる『人界線』。その麓に位置する町『ランダルマ』。そこで主人公アベルは、もう一人の主人公レナエルと出会う。それは邂逅のはずだった……。破綻なく構築された世界で、主人公たちを巻き込み徐々に広がる物語。偶然を徹底的に排除し、生真面目に必然に必然を積み重ね綴られる展開。そこにピリリと遊び心とフックの効いた会話が彩りを添える。「ファンタジーとはかくあるべし」を再認識させる作風であり、商業誌にも引けを取らない作品に思います。最後のセリフは身震いしました。