評価:★★★★☆ 4.2
エル・ワトランディ。それがこの世界の名。
街は聳える外壁に囲まれそこに門はない。その向こうに何があるのか誰も知らない。
森や平原、砂漠に海には果てがない。その遥かなる先に何があるのか誰も知らない。
――いや、知っているのだ。問うまでもない当然のこととして、何もないのだと。
出ることのできない街は扉で繋がれる。
抜けることのできない森も扉で繋がれる。
扉が本来隣り合うはずのないあちらとこちらを繋ぐ。炭鉱の街の扉を抜ければ交易の街の扉に出る。商店の奥の扉を抜ければ森の小屋の扉に出る。
扉が繋ぐ世界。それがエル・ワトランディ。
誰も扉は繋げない。扉を繋ぐ原理は誰も知らない。
――いや、あるいはアドリヴェルテなら――アドリヴェルテの森を探し、扉から扉を抜けて世界を旅するウォルトとラギ。
ウォルトには扉を繋げるという異能力があったが、それには代償を必要とした。代償は過去の記憶。
ウォルトは消えていく記憶を少しでも止めようと、旅の光景を目と心に焼き付ける。
彼らが訪れる絶景の記録と、そこで働く人々の物語。
異世界ならではの絶景と仕事にまつわる、章ごとで完結する短編集。
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象