太陽の墜ちた日 完結日:2016年4月24日 作者:ジョシュア 評価:★★★★☆ 4.1『マハーバーラタ』中に描かれた、かくあろうとした者と、かくあるべしとされた者の戦い。戦士としての正義と、この世に生まれた者としての葛藤。太陽が昇り、そして落ちるまでの物語。 話数:全7話 ジャンル:その他 登場人物 主人公属性 未登録 職業・種族 未登録 時代:未登録 舞台:未登録 雰囲気:未登録 展開:未登録 その他要素 アルジュナ カルナ クリシュナ バガヴァッドギーター マハーバーラタ 神話 注意:全年齢対象 なろうで小説を読む
マハーバーラタはインド神話の叙事詩で、神々の血を引く5人の王子が王国を取り戻すため従兄弟たちと戦うお話です。一撃で無数の将兵を焼き払う神器や空飛ぶ戦車が見られ、一部では北欧神話のラグナロク共々人類は遥か昔核戦争で1度滅亡したという説の根拠に援用されます。その無数の英雄の中で最も人気が高いものの1人が、太陽神の子カルナです。本作は彼の生涯に焦点を当てたマハーバーラタの翻案です。しかし、単なる焼き直しにあらず。原作は紀元前から語り継がれ、人々の感情のポイントも、駆使されるロジックも、現代の日本人には量れない面が多々あります。しかし本作では、各キャラの心理が詳細に、かつ我々も共感し得る形で描かれています。結果、彼らがより生き生きとした人間に映ります。原作は世界一長い叙事詩で容易には読めませんから、本作で部分的にでも触れてみてください。既に読まれたかたもまた違った魅力を見出せます。
美しい。この物語を読み終えたとき、浮かんだ言葉がこれだった。恥ずかしながら、私はインド神話を詳しく知らない。とあるゲームでカルナの存在を知っているくらいだ。読み終えた今では、原典を読んでみたい衝動に駆られている。それほどまでにこの物語の主人公「カルナ」は美しい。いや、カッコいいと言った方がいいのだろうか?自分の心の声に耳を傾け、その行動に正しさを感じるならば是とし、正しくなければ否とする。たとえ死が待っていようとも、己の魂を誤魔化したりはしない。カルナが黄金の鎧を失ってなお輝いているのは、その翳りない魂ゆえだろう、と私は想像する。真似できないからこそ、憧れる。彼のようであれたらと思う。人はいろんな理由のために、カルナのように生きられない。自分の魂の輝きを問い直したくなる逸品である。この燦然と輝く太陽を、是非とも目にしていただきたい。
見よ、高き誇りを持って戦いに生きた英雄を!見よ、自身を省みず、戦士として神をも恐れなかった英雄の生き様を!インド神話を元に、これ程までに英雄を謳い上げた作品を私は知らない。これは現代に蘇った詩人のバラッドだ。彼の英雄を高めこそすれ、貶める事無き。比類無き、彼の英雄よ。この物語で甦れ。熱き血潮があなたにも宿る。目に、耳にしたあなたに、その魂は宿る。
正直なところ、多くの読者はこの主人公に現実味を感じないと思う。彼はあまりにも真っ直ぐすぎて、現代人からすれば、あまりにも感覚的に遠すぎる存在に見えるからだ。 だが、彼は非現実的な存在であるか? 断じて否である。 見よ、彼は泥と貧窮のあいだで産まれながらも、誠意の志しを厚くして独立した。 見よ、彼は歪みを厭い、たとえどんなに卑劣な相手であろうと、敵であろうと、誠意を尽くした。 見よ、彼は己の欲のなさゆえに死に到るが、そこにはどんな後悔も残さなかった。 これこそが英雄である。 太陽の烈しい光の前に立ってもなお、恥じぬ英雄の姿である。 むろん、だからと言って宿敵アルジュナが卑劣だったわけではない。 ただ想う物が違った、それだけだ。 クシャトリヤとして戦ったアルジュナと、一個の人間として戦ったカルナ。 そこにある英雄の魂を。 沈む黄昏と登るかぎろひの狭間に見出せ。