評価:★★★★☆ 4.3
「君のことを殺さないことにします。代わりに私のお願いを一つ叶えてください」
退屈な学校生活。そんなつまらない毎日を変えようと、僕はある日クラスの女子にストーカー行為をした。しかし、それが大きな間違いだった。
彼女は殺人者。それもとびきりのシリアルキラー。見つかってしまった僕は、殺されない代わりにある約束をさせられる。『私の罪をそばでずっと見てること』ただそれだけの約束が、僕と彼女を結んだ。
切ない物語を目指しました。
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
この作品で我々に与えられるもの、それは小さな世界の物語である。残虐な表現が目に映るが、読み進めれば、この作品の根底に流れている音色は暗鬱な重低音では決してないことに気付く。 少しの雑音にすらかき消されそうなほど、繊細な語り口調である。この硝子細工を、すでに割れているものと見るか、あるいは完成品として美しく思うかは人それぞれであろう。 そのことすら私には愛おしめた。ぎこちなさやこそばゆさが、まごうことなき「武器」となっている。作品を底から支えるやさしい旋律に耳を澄ませば、うっとりと聴き入ってしまうこと請け合いである。 満天の星空と比べると我々の輝きは塵芥ほどもない。けれど我々は、些細な輝きをしか愛おしめない。そのことの幸せを、この作品はうたっているのである。 自分だけがもつ世界一の輝きを忘れてはならないと、私は襟を正した。みなさんも、どうぞ。