トラフィック・キングダム 完結日:2016年6月7日 作者:石川博品 評価:★★★★☆ 4.3 道路が車の群れに占拠されてしまった近未来。 人々はパケットと呼ばれる乗り物で移動することを余儀なくされていた。 中学生の桐原奈琉(きりはらなる)は夜ごとに仲間たちとパケットに乗って走りまわっていた。 そこで同じ中学校の堀河多華美(ほりかわたかみ)と出会う。 次第に仲良くなっていくふたり。 やがて多華美は奈琉にある秘密を打ちあける―― 話数:全6話 ジャンル:ヒューマンドラマ 青春 登場人物 主人公属性 女主人公 職業・種族 中学生 時代:近未来 舞台:未登録 雰囲気:シリアス 展開:未登録 その他要素 ディストピア 和風 注意:R15 残酷な描写あり なろうで小説を読む
道路を車が埋め尽くす、という突飛な世界観だが、圧倒的なものに追いつめられる閉塞感は非常にリアル。その息苦しい世界を生きる少女の一人称の文体は、乱暴だがぎりぎりで品位を失わなず、読者の心を強くつかんでくる。パケットと呼ばれる乗り物で、街を駆け抜ける彼女たちの生き様は、まるで綱渡りのようで、しかし、閉ざされた街をぐるぐると巡るばかり。遠くに行きたい、という希望と、友達といっしょにいられれば、という願いと、どこにも進めない、という絶望とが、急いているような文体の中で混然となる。すべての色が混じったものは真っ黒になる。彼女の言葉は、ブラックホールの外周を回転するように、凄まじい速度で疾走する。ありふれた突然の暴力が彼女たちを襲い、そしてその暴力さえもさらに上位の暴力に破壊される。そんなうつろな世界の果てに、少女たちが見いだした光が、ちいさな救いになって欲しい、と願わずにはいられない。