評価:★★★★☆ 4.3
古都府警の魔道犯罪対策課に、川端署から要領を得ない派遣要請が来る。
「ホンマは友達ちゃうやら、行方不明の娘さんは、幽霊やけど生きてはるやら、どないもそのー……アレや、そちらさんの管轄みたいなんやゎぁ」川端署で、行方不明者の中身と第一発見者に事情聴取。
中身はここに居て、身体だけが行方不明。所持品は自室にある。連続女性行方不明事件として、合同捜査本部が設置された。
古都府内で初の「他害を目的とした魔道犯罪」らしき事件。
捜査中、新たな不明者の「中身」を発見する。発見場所には必ず、黒い白百合があった。
他課の刑事は未知の力を持つ犯罪者に怯える。犯人の目的は何なのか、行方不明者の身体は無事、見つかるのか……
自サイト「数多の花」に再掲。
時代:現代
舞台:未登録
雰囲気:シリアス
展開:未登録
③こちらの作品、現代日本に物凄く近しい世界で、魔道犯罪を扱う所謂ローファンタジーなのですが、その中の人間模様や、物の質感、人々個人個人の機微が、とても丁寧描かれた良作でした。また人の情を強調したような登場人物の会話文が、読んでいてとても心地よい気持ちになれます。表面上はライトで読みやすい物語ですが、魔道による設定が物凄く事細かに定められていたり、また、エピソードの中に、現代社会で起こっている様々な問題を散りばめられた、深みのある小説です。序盤はややライトに、中盤ではシリアスな雰囲気が混じりこみ、ラスト付近では派手な描写もあり手に汗握りました。そんなエンターテイメント作品ですが、登場人物が多く、どこか欠けている人物も何人か登場します。それは読んでいる読み手側の生きる現代世界と同一で、遠目に読む自分たちの世界もまた、何か欠落しているのに気づくべきなのかもしれません。