評価:★★★★☆ 3.5
15世紀末に最盛期を迎えた錬金術は、魔術師たちに寿命の伸長と不老をもたらした。
かれらは今もなお生き、その知識を秘匿したまま隠遁している。
そして、西暦2000年。二度目の大世紀末。
生命の禁忌を犯した過去の魔術師たち……「完成者」を、狩るための組織があった。
それが「賢人会議」。現代の魔術師ギルドだ。あてどなく彷徨うかに見える完成者アリツィヤと、彼女のもとに続々と送り込まれる、現代の魔術師たち。
かれらの戦いに巻き込まれる者もいる。
戦いは繰り返される。そのたびに、勝者と敗者が分かたれる。
傷つく者。命を落とす者。犠牲者たちの魂を呑み込んで、戦いは激しさを増す。
その闘争の背後に見え隠れする、影のごとき騎士……『狂王』の姿。アリツィヤの目的とは何か。
『狂王』とは何か。
激しい戦いに身を投じる者達の結末は何処にあるのか。
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
世界観や設定の凝ったファンタジーというのは取っ付きづらい印象があり、それだけで避けてしまう方もおられるかと思います。ただ、せめてこの作品はそうやって忌避するのがもったいない、むしろそういう方にこそ見てもらいたい作品です。語彙を豊富に使い分けた臨場感ある描写ですが一方でくどくなくて読みやすく、目に優しい。ある目的のために長い年月をさすらう魔術師「完成者」アリツィヤ、彼女を宿敵と定めて狙う現代の魔術師ベルクート、そしてアリツィアを助け心惹かれていく誠。追う側と追われる側、双方の視点から描かれる日常非日常は、繁雑にならずきれいにまとまっていて、情感豊かな描写で綴られる登場人物たちの交錯と因縁、それを経てのラストは、とても爽やかなものとなっています。王道ファンタジーが好きな方にも、実はそうでないという方にも手にとってもらいたい良作です。