評価:★★★★☆ 4.1
僕こと野木弥史(のぎやし)は人よりちょっと運が悪い人間だ。きっと幼馴染があの姉さんなのも、それのせいだろう。
そんな僕はある日、アルバムに写っている姉さんの姿が、老いることも若返ることもなく――ずっと十七歳のままだということに気がついた。「いや、てっきり前々から気づいているとばかり思ってたんだけど。気づいてなかったの?」
どうやら姉さんは『呪われた一族』である僕らを守るために存在している座敷童子らしい。
僕ら一族が繁栄し、落ちぶれる理由となったその呪いは――結婚できる呪い!?
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:現代
舞台:未登録
読み終わってまず、大きなため息が出た。感嘆の、満足の吐息だ。世の中にハートフルドラマの類は数あれど、ここまで満足した中編小説は久しぶりかもしれない。とにかく暖かい。暖かくて優しい。よく読むとけっこうヘビーな背景設置がしてあるにも関わらず、その重さをあまり感じさせない。生き生きしたキャラクターたちへの親近感もそうさせる原因のうちの一つだろう。掛け合いのひとつひとつが心地いい。いつまででも聞いていられそうだ、と思わず頬が緩む。世界観とのバランスをはかりながら描き出す、作者のセンスの良さが光る作品である。呪われていたって、不幸じゃない。少年と座敷童子が織り成す不器用で暖かい物語に、あなたも浸ってみてはいかがだろうか。