評価:★★★★☆ 4.3
大学受験に失敗した本条桃花は、家出した先で素敵なカフェに出会った。勉強することに疲れ果てていた彼女はマスターの勧めで働き始める事になるが、手伝いすらまともにしたことの無い「お嬢様」の彼女は仕事以外にも初めてのことが多すぎて?
出会い、失敗、涙、恋。知らなかった感情をひとつ知るたびに、桃花は大人になっていく。
……あなたの春はどこですか?これは春を待つ人々の、暖かい日常を切り取った物語。(カクヨムにて同時連載中 https://kakuyomu.jp/works/1177354054880747072)
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
雰囲気:ほのぼの
展開:未登録
注意:全年齢対象
彼女は新社会人となり、カフェで働く事となった。 与えられるだけの毎日から、自分から動かなくてはならない毎日への変化……その変化はとても辛い事が多い。 今思っている事を横から言われると嫌。 勇気を出して挨拶したのに素っ気なくされると悲しい。 新しいことへの挑戦は……怖い。 それでも、彼女の周りには沢山の人が居る。 喜怒哀楽春夏秋冬……環境や時間は彼女をどう変化させ、どう成長させるのか。 既に社会人の読者様には、どこか懐かしいような……擽ったい物語。 これから社会人になる読者様には、変化するという事を考えさせられる物語。 個性豊かな登場人物達と共に、あなたも春を迎えてみませんか?
裕福な家庭で育った桃花にとって、大学に通うことに特別な思いはなかった。その四年間の「猶予」を失い、彼女はカフェで働くことになる。働くためには、変化を強いられる。自分を曲げる、意義を問う、見えないものを考える――そういった「冷たさ」を求められる。そんなとき「人を生かす」カフェ・ハルコは、それまでになかった体験を提供してくれる。仕事も将来も恋も、思春期のうちに「感じる」ことはなかった。でも、暖かな人びとが見守っている。ゆっくりと「感じる」ことができる……大学へ進まず社会へ出た桃花にとって、ハルコでの新生活は、「青春からの卒業」でもあり「青春のやり直し」でもあった。成長は一方通行ではない。ましてや一本道ではない。立ち止まり、振り返り、時には戻ることもしながら、選択肢を迷いつつ前へと進む――地に足のつかない不安定な少女を丁寧に描き、育て上げる、豊かな色彩の物語。
何もできないことを自覚し、それを正面から受け止めるのはとても大変なことです。悩みながら様々な事を学び、将来に立ち向かう主人公はとてもまっすぐで、その成長を周りの登場人物たちは優しく見守ります。しかし、誰よりも主人公の成長を願うのは、読者ではないでしょうか。読む人にとって、主人公の姿はそれぞれのかつての姿と重なり懐かしさと共にまっすぐに自らの道を進んで欲しいという親心にも似た気持ちが生まれます。登場人物たちと共に、頑張れと言ってあげたくなる。そんなまっすぐな主人公が魅力的な物語です。ノスタルジーに浸りたい方、是非ご一読ください。
働くことは楽ではない。嫌なことの方が多い。辛いことの方が多い。 けれども、逃げることは出来ない。そして働かなければ分からなかった事、それは確かにある。頭を使い、手を動かし、自ら悩まねば分からなかった事。 それはしばしば、給料よりも価値があったりするものだ(無給は嫌だが)。 一人の少女は、親の庇護下で学ぶことしか知らなかった。一つの挫折をきっかけに、彼女はカフェでバイトすることになる。 それは人生の最終目的では無い。けれども、この先彼女が向き合う為に必要なステップだ。 何に? 彼女自身の人生に。他の誰でも無い、自分の為に。親が言ったからではなく、自分で責任を持って歩けるようになる為に。 春の光に芽生え、夏の日差しに成長し、秋の月光に輝きを増し、冬の寒さにも負けず。 カフェに集まる個性豊かな客や、厳しくも優しい先輩達と共に――主人公の再びの春を祝おう。
大学受験に失敗した桃花は、ある経緯からカフェで働く事になる。そこにあったのは、今までとは全く別の世界。勉強はできた、でも社会に出た時教科書だけの知識では補えない物がたくさんある。教えられるだけではなく、自分自身で自分の未熟さに気づいていく事。何が出来なくて、どうしたら出来るようになっていくか。何より大事なのは、自分自身の事を知って行く事。そこから、本当に進んでいく事が出来る。丁寧な文章の中に、一歩一歩がきちんと描かれている。これは、「人を生かす」物語。出来れば社会人になる前に読んでみたかったと思える。逆に、今まさに広い広い世界へ戸惑いながら進もうとしている人に読んでほしいと思える物語。描かれているのは、未来に向かって羽ばたき始めた少女の、後に宝物になるであろう1ページ。