黄昏をゆく葦の小舟 完結日:2016年6月30日 作者:たびー 評価:★★★★☆ 4.4終わる世界を生きる人々の年代記。 四部構成作。 エブリスタ・カクヨムでも公開中。 2019年2月 エブリスタさま開催の、執筆応援キャンペーン「終末/退廃/ディストピア」において入賞いたしました。 ありがとうございますm(__)m 話数:全10話 ジャンル:パニック 登場人物 主人公属性 未登録 職業・種族 少年 時代:未登録 舞台:未登録 雰囲気:ダーク 展開:未登録 その他要素 ディストピア ほのぼの 人類滅亡まで猶予あり 天災 彗星衝突 老女 注意:残酷な描写あり なろうで小説を読む
人間が試される瞬間が、みっつある。ひとつは、一敗地にまみれたとき。ひとつは、自分を取り戻さなければならないとき。ひとつは、自分の期限を切られたとき。これは最後のひとつの物語。六〇年後の地球滅亡という絶妙に微妙な期限を切られてしまった者たちのお話。どこかの大作映画みたいに派手な解決方法や救世主はあらわれない。だから、ボクたちは向き合わなければならない。この世界は終わる。必ず、ということに。その問いかけは、真摯だ。だから、この物語は残酷だ。暴力やテロルもたしかに出てくるけれど、この作品の「残酷」というのは、そういうもののことじゃない。たぶん、あったであろうたくさんのトゲを、ひとつひとつその手で取り除かれた言葉は、やさしく傷口に当てられた手のように、誤魔化すことを許さず問いかけてくる。そのやさしさに耐えきれずに、ボクは泣いてしまった。あなたはどうですか?
バレリーナだった老女の柔らかな過去語りから、私たちは一気に引き込まれて行く……やがて終わる世界に。 世界の終末までをいくつもの軌跡で辿る、美しくも哀しい連作集。 それはまるで「黄昏をゆく葦の小舟で肩を寄せ合い」、それぞれの喜びや哀しみを少しずつ分け合っていくかのよう、やがてくるさよならの時まで…… しかし、ただ哀しさだけではない。ラストの短い物語にもあるが、葦の小舟の行きつく先には、光も確かに見えるのだ。時系列で捉えればただの滅びの物語だと思えそうだが、時を行きつ戻りつ、私たちはそこにただ滅びるだけではなく、何かが繋がっているのが見えるはずだ。 槇のことばが端的に語る。人は「生きるために、生きる」のだから。 誰もが免れることのできない滅びへの途上に、それぞれの光を見つけ出せますように……この物語は私たちにそう優しく囁き続けている。
“抗いがたい、絶対不可侵の領域に””世界””は存在します。世界にとって私たちの生命は塵芥のようで、つまるところ、世界が終わると決まった時、いかに嘆こうと私たちはその時点は終末となります。けれど世界が終わるからって、私たちが終末の日に立ち会えるとは限らない。そして不条理な死を宣告された時、人はそれでも生きたいと思うのです。自分の生を謳歌したいと願うのです。考えてみれば、当たり前かもしれません。けど、当たり前のことを本当に理解している人はきっと少ない。この物語は、「当たり前」を突きつけてくる。胸が張り裂けそうなほど、苦しくなるかもしれません。けれど、この物語には救いがあります。まごう事なき人間賛歌。黄昏をゆく葦の小舟に、私たちが乗った時。あなたはその歌を聞くでしょう。”
約束されたのは終末。それでも、その中だからこそ見える物。見出だす『未来』『希望』。 それは、過去を見詰める瞳かもしれない。未来をそれでも探り出す悩める瞳なのかもしれない。 ただ、我々はその終末に向かって進む。その限られた中で。 刻む時は問い掛ける。我々の選択肢を。 これはきっと『今』を生きる私達の物語。死は遠い日に待っている訳ではなく、不意をついて傍にいる事もある。 だから怖れず進むのだ。同じ舟で黄昏を行く葦の小舟で