評価:★★★★☆ 4.1
君のような若者には信じられないかもしれないが、私の若い頃というのはそう悪い時代でもなかった――
老人が学生に語る、戦争時代のある夏の思い出。友人が打ち明けた家の中の不審な気配。様子のおかしい大人たち。平和学習の息抜きのような、何気ないあの時代の一幕のはずだったのだが――
*注意*感想欄に本編の重大なネタバレがあります。
話数:全3話
ジャンル:
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
なぜ人は、誰かに秘密を語るのだろう。誰かと共有すれば、それが露見する可能性は高くなるというのに、甘美な誘惑に誰もが負けてしまう。恐らく秘密というものには、実体があるに違いない。いつの間にやらその体積を増して膨れ上がり、崩れ落ちそうなほどの質量を持つ。だからこそ人は、その重荷を誰かに預けたくて秘密をそっと分け与えるのだ。とある時代の思い出について語る老人と、その話に耳を傾ける女子学生。それは穏やかな、きっとあなたの隣でも見かけることができる日常。けれど老人の語る思い出の歪さに彼女が気付いた時、物語は急展開する。本当に怖いのは、人々の不安を掻き立てる幽霊という奇妙な存在か。それとも「時代」を免罪符として、欲望と狂気をむき出しにする人間の方か。結末を迎えたとき、あなたはきっと言葉をなくすはずだ。なんと人は罪深く、業の深い生き物であることか。そして私たちもまたそんな人間の一人なのだ。