評価:★★★★☆ 3.8
エデンの街に暮らす少年:ユバルは胸の”軋み”に悩んでいた。話の合わない級友、妙にすかした女教師サライ、そして、誰も教えてくれない喪われた街バビロンの真実……そのすべてが原因のようで、原因ではない。ユバルは彼の神に祈った。どうか答えを授けてください。そしてその日、奇蹟は起きた。ユバルは昼食を取ろうとした聖マリア公園で、「バビロンの民」と接触する。それは案山子のようななりをした男だった。案山子は尋ねる、「求めよ、さらば与えられん」少年は案山子に誘われ、喪われた地バビロンへ向かう。そこで彼は真実を知り、エデンは孵卵の時を迎える。
話数:全12話
ジャンル:
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象
この物語は一人の少年が、知を持つことによって始まる。少年は知を持つが故に、思考しない人々と自身の乖離に疑問を抱いていた。その時、少年の前に異端者が現れる。この物語は、少年が思考を取り戻し、そして「飯を愛する」までの物語である。人間の舌は味に敏感であり正直である。その舌に、刺激物を乗せられていたと知った時、果たして人は恨まずにいられるだろうか。ところで、かつて優れた哲学者を輩出したギリシア世界には、美食と思考が存在していた。哲学とは、知を愛する事である。そして、知を愛するには疑問を抱くことが必要である。さらに、疑問を抱くために、きっかけが必要である。舌は刺激に敏感である。舌は飯を吟味し、思考する。ならば、舌の肥えたものこそが、学問を修めるに至るだろう(?)。即ち、哲学とは、飯を愛する事である。知識欲と本能的な美食への渇望は、無関係なようで、案外近いのかもしれないと思わせる作品でした。
久しぶりに面白いと思える作品に出会えました。作品の中に流れる空気が古典文学そのものの不思議な小説です。 舞台は氷河期を迎えた遥か未来の地球。キリスト教を母体とした異端な宗教に支配される人々がエデンという閉じられた世界で暮らすディストピアものです。 このエデンに暮らす少年ユバルは罪を犯したというバベルの民と出会い、今まで自分の中にあった価値観に疑問を抱くようになります。 そのユバルが決定的に変わるラストのシーンに思わず唸らされました。とにかく作者様の独特なセンスには驚かされます。 そしてラーメンがとてつもなく食べたくなる作品でもあります。 いやぁ、食って奥が深いんですね……。