評価:★★★★☆ 4.3
魔術国家デ・ラ・ペーニャには、魔術の研究機関である『魔術大学』が無数に存在する。
学内では各分野における教授の指揮の下、新たな魔術や道具を開発すべく、大勢の魔術士が試行錯誤を繰り返していた。17歳の少年、アウロス=エルガーデンは最低水準の魔力しか持たない魔術士。
彼は魔術そのものではなく、魔術が出力されるまでのプロセスを簡易化・高速化する為の論文を作成しようとしていた。過去に多くの魔術士が諦め、現在では“一攫千金論文”と揶揄される研究に臨むアウロス。
才能も愛想もないその少年の揺るぎなき信念は、それぞれに質の異なる闇を抱えた同僚達を巻き込み、やがて大学、そして国家にさえも多大な影響を及ぼす――――
話数:全346話
ジャンル:
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象
三年前ぐらいに、私はこの小説を読んだのですが、レビューを書いてなかったので、書くことにしました。私がなろうで小説を読むのは、暇つぶしのためです。そのため、ストーリーが面白ければ、暇つぶしで読んでしまいます。しかし、面白いストーリーではなく、物語に出会うのは非常に稀です。私が思うに、ストーリーと物語の違いは、登場人物達です。登場人物がプロットの為に動くのがストーリー。登場人物が自分のために動いて、結果としてあるのが物語だと思います。そして、物語の登場人物は必ず、自分の目的や信念のために動いています。この小説もそうだと私は言い切れます。彼らは、葛藤しながら、過去を振り返りながら、前に動いています。熱くなる時も、熱くない時も、自分の目的や信念と真摯に向き合い動いています。主人公アウロスの、人生すべてを捧げてまで、目的を達成させるという信念を描いた物語を読んでみませんか?
話の内容・展開は勿論面白いのですが、そのなかで登場人物それぞれが次にどのように動いていくのだろうというのも気になり、「次はどうなるのか」と読む手が止まりませんでした。言葉に表すのは自分の語彙力では難しいのですが、登場人物のそれぞれにちゃんと芯が有るというか、こういう人間として生きているというものが有るというか。どの人物もとても魅力的で、各自に考え方・生き方といったものがあり、それに基づいて行動していると感じました。そんなキャラクターたちが出会い、関係を構築し、関係が変わっていく様子も読んでいて楽しいです。読むなら休日前の方が良いです。
読んで言葉が出ない作品、感嘆のため息しか出ないというのでしょうか。素晴らしい、その一言につきる作品です。しっかりした下地と緻密に配置された人間関係による情報戦の数々など、文章の読み解き甲斐がある展開の数々。ファンタジーでありながら舌戦の駆け引きを楽しみたい、そんな読物を探しているのでしたらこの作品がお勧めです。読み終わった後に心地よい余韻に浸ることができます。
凄く楽しめる作品に出会えた事に感謝します。判断力と洞察力が抜群…しかしそれ以外は標準以下とは驚きました。記憶力は±0ってのも笑いを誘ってくれます。また登場人物の少なさに感動しています。登場人物が少ない作品は非常にデリケートな雰囲気を持ち、下手をすれば作品自体を壊す事もある。私はこのサイトで2人目の素晴らしい作者(作品)に会う事が出来本当に嬉しいです
このお話の主人公は、異常だろってくらい頭が回ります。研究の障害となるできごとを、その回転の早すぎる頭脳で乗り越えていくさまは壮快です。でも。同時にこの主人公、とんでもなくかわいいやつなのです。何がなんでも論文を完成させようとするその動機が、純粋すぎて切なくてたまりません。はい。そしてそんな彼をとりまく人たちも、最初は冷えてたりするのですが、最後に向かうほど優しくて、微笑ましいのです。難点としては、けっこう頻繁に誤字脱字が見受けらることでしょうか。序盤の世界設定説明文はちょっと重たいですが、普通に読書する人なら許容の範疇では? と思います。現実にいもしないキャラクターたちをこんなに一途に応援したことはありません。明日の朝のことなんかもういいや! って読破して、最後にあったかいものを残して余韻に浸る、あの感じを最近やってないなあという方々。ここにありますよ。
この物語の主人公は魔術を学び研究する者。この物語の主人公は大学でその研究をし歴史に名を刻もうとする者。序盤における魔術への説明は必然的に存在し、そこに論理も存在する。そこに多少の重さを感じるかもしれない。……しかし、そこで読む事をためらってはいけない。本当のストーリーはその後にあるから。そう「本当の」物語はその後の後に明らかにされる。物語は重厚な雰囲気の中、窮屈な環境と陰鬱な人々から始まる。だが主人公の強い前進と 彼を支える明るくユーモアある人々により、物語は明るさと優しさに満ちていく。時に主人公は悲観的な心境になり苦しむこともある、だが物語は陰鬱で終わらない。それどころか読了後には希望と明るさを余韻としてもたらすだろう。この作品は完結しており未完の心配はない。そうロスト・ストーリーは補完された。それは物語の中だけでなく読者の余韻を埋めるものになるだろう。