評価:★★★★★ 4.5
二〇四四年、世界のエネルギー事情はある一企業の活躍により一変していた。
その企業の名前は「カツラギエネルギーコーポレーション」
20年前に彗星の如く現れ、瞬く間に世界各国のエネルギー産業のシェアを奪い頂点に君臨したこの企業には、世間には知られていないもう一つの顔があった。
それは世界征服という余りも馬鹿げた野望を掲げた「地天海」というテロ組織としての顔だ。
秘密裏に計画を進めてきた彼らはエネルギーというインフラそのものを後ろ盾に、世界に対して無差別テロと言う名の宣戦布告を行った。
圧倒的な力で蹂躙を続ける地天海の脅威は、ついに極東の島国日本にも襲いかかった。
その報を聞き、現場に駆けつけたのは特設自衛軍第一師団第一特務連隊所属一等特曹「須崎万智」
彼女はとある理由により以前から「地天海」の台頭を予測していた日本政府が用意した「切り札」である。
今ここに地天海VS万智、国家の命運を掛けたの戦いの火蓋が落とされた。――一人の男の笑みと共に
話数:全20話
ジャンル:異能バトル
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:残酷な描写あり
約一冊分程で完結していますが、その中でしっかりと納められているのは作者さんの技量でしょう。丁寧な描写が際立ち、息もつかせぬ程動くアクション。味のある緊迫感が出されたアクションは、流石はSFと言えるでしょう。登場人物の心理描写も合間って、光側と闇側の心を覗いてしまいたくなる。そんなかっこよさが、あります。緊迫感と心の動き。どちらを重視して見るのか……それによって、複雑に変わってくるのかもしれません。
研ぎ澄まされた文章とサスペンスあふれる展開、そして緊迫のアクション。この作品はその全てを持っています。大ざっぱにまとめると超能力バトルということになりますが、単純な技のぶつかり合いではなく、性質から考え抜かれた緻密な戦闘描写が目を引きます。しかも、能力とその謎を軸に対立する二つの組織の動きが緊張感をもって展開し、さらに別の思惑が重なるという贅沢なドラマ構成。視点を状況に沿わせる群像劇として書かれているので、単純な善悪ではなく、衝突が織りなすサスペンスを楽しめます。場の空気を感じさせる筆致や、展開のテンポの良さなど、作者様の確かな技量を感じる作品です。確かな技巧と鋭い発想で織られたノワールな超能力アクション。どうぞ皆様、ご一読下さいませ。