評価:★★★★☆ 4.2
アスンシオン帝国の下級貴族アンセムは、後宮に入れる予定の妹エリーゼと身体が入れ替わってしまう。
仕方なく自分で入宮するが、慣れない女の身体と美女ばかりの閉鎖空間、そんな中でも帝国軍人として、男として、自分らしい人生の居場所を探し続けるのだった。~8/27 完結しました!
読んだ感想、誤字指摘お待ちしております!
アンセム君の物語は完結ですが、感想要望で番外編も執筆いたします。~本作の続編「シスターズ・ポゼッション_SRPG版dominate_ep3」公開中です。
本作と同一世界観のSRPGです、フリーゲームですのでよろしくお願いいたします。
話数:全184話
ジャンル:エピック・ファンタジー
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
某アニメ映画でも有名になった、入れ替わり。一般的な視点から見ると、それは人格変化によるドタバタがメインだろう。笑いあり、問題あり、葛藤あり。しかし、この作品は「生き方」に重点を置いている。ファンタジー設定ならではの、男性の役割・女性の役割。もしそれが入れ替わってしまったら?今まで騎士に従士していた男性が、いきなりメイドになったら?そしてメイドが、いきなり騎士になったら?そういった観点から戦争、戦術、そして人種問題などを取り上げた作品はほとんどない。なぜなら、作り上げるのが難しいから。きちんと入れ替わった相手の気持ちまで考え、問題が終わりに向けてクロスしていく展開は美しい。ここまで綿密に練られた構成は珍しいので、作品の完成度は物凄く高いです。登場人物が多すぎて覚えきれませんが、シスターズ・ポゼッションを知っている方ならきっとハマるはず。
ともかく出だしから驚かされる作品でした。文章も読みやすく説明口調でないのに物語のすべてがわかりやすく書かれていました。さらにかわいらしい挿絵や設定説明の章など読む人のことを考えたつくりにも好感が持てました。そして物語本筋も大きな流れと小さなエピソードが複雑に絡み合う姿は本当に作者の技量を感じさせました。驚かされた作品でした。
TS系の作品への評として「TSに意味があるのか」という指摘があるが、この作品については完全に意味があると言える。最初はTSして女性になった主人公が男性時の特技を生かして後宮で無双する…という有りがちな話かと思わせておいて、中盤の大量TSによってジェンダー(性差)というものの意味を考えさせる作品になっている。ファンタジー分類ではあるが、バックボーンにある骨太な科学知識と、性差というものについて社会科学的IFを追求している事からすると、むしろ銀英伝以来のソーシャルサイエンスフィクションと言った方がいいかもしれない。人物の描き方も秀逸で、完璧な英雄ではなく欠点弱点もある人々の群像劇となっている。特に、脇役然と登場しながら、中盤から一気に活躍する「悪役」レンは、むしろ三国志演義の曹操的な影の主人公と言える。戦記好きのみならず、SF好きの人にもお勧めの快作なので、ぜひ読んでいただきたい。