評価:★★★★☆ 4.3
昔々、お爺さんとお婆さんが小さな村に住んでいました。ある日、お婆さんが川で洗濯をしていると、川の上手から一隻の船が流れてきました。その船には美しい女が乗っており、さらに女のお腹には子が宿っているようでした。お婆さんは慌てて家に女を連れて帰ると、母の命と引き換えに――この世を救う勇者が生まれたのです。
鬼により世が闇に包まれようとするとき、一人の少女に導かれ、勇者たる少年は剣を取り立ち上がる。これより語るは、ある少年の英雄譚。人と鬼の間の物語。
昏い闇が立ち塞がっても、旭日を見いだせ!
話数:全109話
ジャンル:アドベンチャー
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:残酷な描写あり
古来より、人は生死と付き合ってきた。人間が理解するまでもなく、生と死の営みは自然の摂理としてそこにある。だが人は生死を知る努力を続けた。その結実の一つが神話である。「かぎろひの立つ」は、京士郎という青年を主人公にした、新たなる神話の一つである。京士郎は野山で生きる青年である。父母を亡くし、老父母の手で育てられてきた。神通力をもつ彼は、他人に疎まれ、孤独を胸に秘めていた。そこに、少女:志乃は現れた。鬼に追われて逃げてきた。青年は少女を助け、旅路の起点に辿り着いた。旅路は険しく、しかし、避けられない困難に満ちている。だが、目を離せない力強さが溢れている。それは神話の力強さだ。どうか彼らを見守ってほしい。その果てにはきっと、代えがたいものを得られるから。
彼は孤独だったのかもしれない。 母は早逝し、父は人ならざるもの。 山あいの村に育った彼は、人でありながら、人にはなれなかった。 彼はまだ、目覚めを知らない。 ──少女に出会う、そのときまでは。 この世に、鬼があふれている。 世に異変が起きている。世間知らずの彼のもとにあらわれた、志乃という少女。やがて彼は少女と道をともにし、長い旅に出る。 それは長く、険しい旅だった。 鬼は強く、人は脆かった。 鬼は人を傷つけ、殺し、誑かした。 人は悲しみ、苦しみ、そして死んだ。 彼は少女とともに前に進む。戦いながら、学びながら。 そして、泣きながら。 それでも前に進んだ。 そこに誰かがいたから。前に進めと心が叫ぶから。 やがて、戦い終えた彼はそこに立つ。 かぎろひの立つ、その場所で。 その名は京士郎。彼の名前は、死んでも腐らない。 もう、彼はひとりではなかった。
美しい。一言で表せばそうなるだろうか。ゴテゴテと飾り付けられた言葉は似合わない。主人公たちの生き方にも、この作品そのものにも。和風とは余計なものを削ぎ落とした「引き算の文化」だと誰かが言っていた。成程、この物語の美しいさはそこから来ているのかもしれない。舞台は平安。京士郎は小さな村に住む「普通ではない」少年だった。自分を見出すため、その中に燃える朝日を見出すために彼は少女と旅に出る。様々な場所で語り継がれてきた伝承や神話を下敷きに、次々と織り成されるはまるで上質な絹だ。手触りはよく、滑らかで、だが読者の心を揺さぶってくる。森に存在するそれと似た静寂の中に、太陽にも負けない熱い想いの溢れ出る冒険譚である。長い語らいは必要ない。どうか肌で感じて欲しい。開け諸人、物語の始まりの扉を。
人と蛇の狭間にて、少年は迷っていた。獣よりも力強い体は何の為に。遠きを見渡す目、針が落ちる音さえ拾う耳は何の為に。 そして両親の顔すら知らぬ自分は――何の為に生きているのか。 日本が日の本と呼ばれていた時代、鬼と呼ばれる生き物が暴れていた。人々は鬼に恐れをなし、細々と生きていた。この世界を救おうと願いを抱き、一人の少女が使命を抱く。 自分自身の運命を定める旅路は、いつしか少年のそれと重なる。 桃太郎をベースにしつつ、作者は独自の物語を築きあげた。混迷極まるこの闇の中を、二人はそれぞれの想いを胸に諸国を行脚する。幾多の鬼が立ち塞がれど、けして負けず諦めず。 その揺るぎなき決意こそが――未来を照らし出すかぎろひなのだから。
例えば古典。例えばアメコミ。 怪異と英雄の物語はかつても今も多くの人々の物語をとらえてきた。 誰しもが歩み、同時に歩み切るのは難しい己の道。 時は過去。とある美しい貴族の娘と恐ろしくも情深い白蛇が恋に落ちた。 最期まで愛し合った彼らの子、主人公:京士郎は気高く熱い心を持っている。 逞しく美しい容貌。獣のように早く強いからだ。あまりに強い力ゆえに同じ村に暮らす人々に疎まれても、育ての親たる老夫婦の慈しみを受けて彼はすくすくと成長した。 しかし、穏やかな日々は、緩やかに過ぎ去ろうとしていた彼の運命は、都を脅かす『鬼』の出現によって変わり始める。 多くの人と鬼との出会い、そして素直でなくて時に厳しくも優しく真面目な女術師:志乃との関わりを経て、時に自らの血に惑いつつも彼は進む。 旅と共に成長していく彼の行き着く先は。 心に熱い血が通っていくような素敵な和モノです。