評価:★★★★☆ 4.2
普通の家庭に暮らす小学5年生の七瀬優衣と、あまり学校へ来ない同じクラスの三浦裕也。優衣は「お母さんに殴られた」などと平気で話す裕也のことが、次第に気になっていく。やがてふたりは別れるが、中学生になって再び出会う。それぞれの胸に小さな痛みと、淡い想いを抱えて……2017/11/30改稿したものをカクヨムさんでも公開しました。2018/1/17エブリスタさんでも公開しました。
注意:全年齢対象
完結日:2010年5月31日
作者:さら
普通の家庭に暮らす小学5年生の七瀬優衣と、あまり学校へ来ない同じクラスの三浦裕也。優衣は「お母さんに殴られた」などと平気で話す裕也のことが、次第に気になっていく。やがてふたりは別れるが、中学生になって再び出会う。それぞれの胸に小さな痛みと、淡い想いを抱えて……2017/11/30改稿したものをカクヨムさんでも公開しました。2018/1/17エブリスタさんでも公開しました。
子供に当然のように与えられるべきものが、与えられなかったり途中で途切れたりした時、彼らが次に求めるもの。庇護されなくてはならない立場の人間の位置は、常に誰かの後ろだ。それが自分には居辛い場所であろうと。自分が自分であることを認めるために身体を丸めて守るものや、しがみつく淡い繋がりの描写が鮮やかだ。主人公はやや内向的だが、ひたむきで強い。思春期の始まりから終わりまでの、家庭事情や友人関係の心の揺れは、けして爽やかではなくて、とても辛い。似たような痛みを感じる同士が、惹かれあい遠くから見つめあう。そして、別々の場所から同じ夢を見る。自分を保ったまま、子供でさえなくなれば叶う夢。彼らの未来に幸多かれと、そう願わずにはいられないラストに脱帽です。
まだ完結していない作品である。しかし「感想」という形では称賛できないというか、したくない。なぜか。うまいなあ――。第1話を読んで、思わず声を出していた。それからは、ぐいぐいと引きつけられて第12話まで一気に読んだ。会話と地の文のバランスが実にいい。会話をだらだらと連ねて進めていく傾向の作品が多い中で、地の文が効果的に挿入されている。会話がリアル。地の文に無駄がない。1つのエピソードが終わった時の余韻が、たまらなく「かっこいい」。傑作だと思う。気になり、この作者の全作品に目を通してみた。天性のストーリーテラーだという印象をいだいた。特にこの作品では、上述のように地の文が生きている。会話だけで読ませることも、この作者には十分可能だと思う。だが、それではもったいない。この先もこの調子で書き続けてほしい。そんな願いを込め、あえて「レビュー」を贈りたい。