バタフライエフェクト・ヒーロー 完結日:2016年9月18日 作者:千場 葉 評価:★★★★☆ 4.3 ほんの些細な行動が、思いもかけない何かの引き金になる―― その蝶の羽ばたきは、どこまで広がっていくのだろうか。冴えない青年の巻き起こした小さな風を追う、人生の群像劇!(完結済) 話数:全10話 ジャンル: 登場人物 主人公属性 未登録 職業・種族 未登録 時代:未登録 舞台:未登録 雰囲気:未登録 展開:未登録 その他要素 バタフライエフェクト 一人称 文芸 群像劇 注意:全年齢対象 なろうで小説を読む
ある若者の、とるに足らない気まぐれの行動。たかだか数メートルを走り抜けただけのそれは。予測不能なカオス系の変化で以ていつしか大きなうねりとなって宇宙にまでその羽ばたきを届かせる。まさにバタフライエフェクト。ファンタジーの要素もない、英雄も魔法もない。登場人物たちは自分たちが大きな物語の一つの歯車であることなど気づきもしない。それでも日常の中で確かに繋がる連鎖は、箱庭を外から眺める者にだけ見える形で物語を紡ぎ出す。きっと誰かは誰かの歯車を回しながら生きている。そんな一つの群像劇。
作品のタイトルは 「バタフライエフェクトヒーロー」。物理学でしばしば語られるパラドクスのことだと、タイトルを見てすぐにわかりました。つまり、何でもない蝶の羽ばたきの一つで起こった微風が、巡り巡って大きな嵐を引き起こす、という、ちょっと思考実験のような考え方です。仏教では「縁起」といい、この世にはどんな些細な行いでも影響力があるということが、仏典にはたくさん書かれています。この作品も、些細な時間の積み重ねが巡り巡って地球の危機を救う話ですが、作者さんが案外読書家であること、知識量の多さ、それに付随した記述のテンポ良さなどがあり、なろうにもこういう作品が増えたらいいな、と心から思いました。まさに千場文学という感じ。すらすら読めて読後感が良いので、ぜひ通勤通学の際に読んでみてください。
蝶の羽ばたきが、地球の裏側ではハリケーンになっている。なにげない日常が、世界をゆるがすものとなる。派遣工員のふとした行動は、惨事につながる。その惨事は予想だにしない方向へ転がり、地球の裏側どころか地球の外の事象に影響をおよぼす。バタフライエフェクト・ヒーロー彼はまぎれもないヒーローである。けれど、誰もそのことを知らない。彼自身も。雀の涙の報酬が得られたことも。練られたリアルガチな世界の上に、この奇譚は成りたつ。きっと、つながっているのだ。スポットライトを浴びることがなくても。