評価:★★★★★ 4.5

 手もとに、分厚いケアベアの手帖がある。詩を書きためたものではなく、労働の賃金を書きしるしたものである。その働いた額をきちんともらえるかどうかの、無味乾燥の備忘録である。時間と賃金の羅列にすぎないそれが、数年まえの記憶をあざやかに呼びさます……。

 もう、五年もまえのことになる。前職だけではとても食っていけず、日雇い派遣に登録して窮乏を凌いだ。スポットの日雇いというのが民主党政権によって禁じられ、前職を辞めざるをえなくなった。いまにして思えば、よくあんな生活をしていたものと感心する。いまでは完全週休二日、それでも足らないと思っているくらいである。
 『労働哀歌』。ももいろクローバーZの曲に、大槻ケンヂ作詞の『労働讃歌』があった。『労働讃歌』はサラリーマンへのリスペクトがこめられた応援ソングなわけだが、労働とはそんな歓喜にみちたものではない。労働の実態とは「悲哀」である。人間が金銭の奴隷でありつづけることの「悲哀」であるからこそ、労働者は労働に意義ややりがいをこじつける。無間地獄のごとき「悲哀」であるのだ。その意義を捏造するために、私の労働体験を文学に置換する……「悲哀」にみちた試みである。


話数:全22話
ジャンル:

登場人物
主人公属性
  • 未登録
職業・種族
  • 未登録

時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録

注意:全年齢対象