評価:★★★★☆ 3.5

 私が中学生の頃、高校野球規定の改変が行われた。その一つが、女子の公式戦参加許可、というものだった。

 あの日の事は、今でも覚えている。私が初めて球場に行った、あの日。

 満員の球場。割れんばかりの観客の声援。その中心、マウンドに彼女は立っていた。忘れるはずがない。私はその背中に憧れ、追いかけ、野球を始めたのだ。あの日、私の心を魅了し鷲掴みにした、彼女の名は――――

「上野智美」プロ野球史上、初めての女性選手。そして、全国の野球少女にとっての夢。

 私は今、彼女が切り拓いたその道を歩もうとしていた。

 かつて天才野球少女と呼ばれた私には、一つ欠点がある。それは孤独だ。

 誰かに気を遣うこともなく、誰から罵られることもなく。自分だけの世界に閉じこもり、何もかもを自分で始めて、自分で終わらせる。誰かに迷惑を掛けることもない。

 私は、そうやって生きてきた。これからもそうするつもりだった。

 ――――あんたさえ現れなければ。

 私の人生を変えたもう一人の人間、「安達奈々」。


話数:全44話
ジャンル:

登場人物
主人公属性
職業・種族
  • 未登録

時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録

その他要素
注意:全年齢対象