評価:★★★★☆ 4.4
とある国に、四季を司る魔法を使う女王がいた。
女王は国の外れの深い山にある塔に暮らし、そこで日々、季節の歌をうたうことで国に四季を廻らせていた。
しかし、三年前の冬に女王は病に倒れ、帰らぬ人となる。季節を司る力は、女王の娘の四人の姫に託された。
長女の春の姫君。
次女の夏の姫君。
三女の秋の姫君。
そして、末っ子の冬の姫君。それぞれが担当する季節の間、姫は塔で女王と同じように歌をうたい、国に季節を運ぶようになる。
今の季節は冬。
ときおり外から聞こえる狼の遠吠えを耳にしながら、今日も冬の姫は歌をうたい、思う。「冬なんて、なくなればいいのに」と。
話数:全20話
ジャンル:
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象
先ず、作者様が選ばれ、紡がれている言葉の一つ一つが本当に厳選され、選び抜かれたものであり、その言葉の持つ余韻等が本当に美しいです。このお話自体が本当に素敵で、ときには胸を締め付けられ、ときには姫と一緒に心弾ませる様な大変主人公に共感出来る物語なのですが、そんな素敵な物語を、作者様が厳選された言葉達が更に輝きや花を添えていると思います。このお話を書かれた作者様は、きっと言葉の知識量が本当に豊富で、それらの持つ膨大な意味を理解し、一番輝けるかたちで紡げる方なのだと思います。
「オオカミの花嫁」の拝読を始めた時、冬の童話であることから、作者様が以前書かれた童話「白い双子と白き竜」を思い出しました。その先入観を良い意味で裏切った、微かな甘さが漂う、強くて優しいおはなしでした。冬の姫は自分が司る冬の季節が嫌いでした。自らを傷つけるような行為の果てに、一頭の狼と出会います。自分を食べて欲しいと、自虐的な願いを申し出る姫に対し、狼は実にクールで、かつ大人な対応を返すのでした。この狼のキャラクターが男前であり、相手は狼であるにも関わらず「なんてイケメンなんだろう」と、惚れそうになりました。(本当にかっこよい!)清涼感のある文面がたたみかけるように紡ぐものがたり。作者様の持ち味である凛とした表現が、強くて美しく、優しい冬の童話にぴったりでした。冬の姫の成長を感じられるラストはほのぼの嬉しく、幸せな読後感に浸れます。