評価:★★★★☆ 3.8
一人の老庭師が急死した。彼は20年以上前に唯一の子を失った、寂しい老人であった筈だった。しかし、老庭師にして老紳士は自分の有する白亜の豪邸のオーナー権を、その子孫に譲るという遺言書を残していたのだ!
その遺言書に導かれて、老庭師を祖父に持つ娘ルシールは、亡き母の思い出話に聞くのみだった故郷、上流貴族クロフォード伯爵の領地を訪れる。見知らぬ父が居る筈だ。
だが裏街道のギャングたる遠縁の叔父が明かす所によれば、亡き母は、不倫の末にルシールを妊娠し、不可解な蒸発事件を起こして失踪していたらしい…ついに真実を語らぬまま逝った母、沈黙したまま逝った祖父…母が愛した人は誰だったのか?祖父は何を知っていたのか?クロフォード伯爵にも、その息子リドゲート卿にも…名門クロフォード伯爵家そのものにも、何やら不穏な事情があるようで…?!
一方でリドゲート卿も、謎の多すぎる娘ルシールの事が気になって仕方がない。伯爵邸の庭師も務めていた故・老紳士の孫娘…平民クラスの領民の一人でしかないのに。
深い雪闇の中に交差しつつも封印されてしまっていた運命が…長く秘められていた謎が、記憶が、愛が、時を超えて今、動き出す。
話数:全92話
ジャンル:
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:じれじれ
展開:未登録
クロフォード伯爵領の中に存在する、かつて貴族の館だった白亜の豪邸ローズ・パーク。そのオーナー協会員の一人であった地元紳士にして老庭師が、新年の雪の宵に、いきなりの不審死を遂げた。彼は20年以上前に唯一の子を失った、寂しい老人であった筈だった……。冒頭から読ませる展開で、ミステリ、サスペンス要素をふんだんに含めた、少し大人向けの恋愛小説です。渋いオジ様キャラが好き(私含む)な人には、絶対おススメです。そして、とにかく女性キャラが愛らしい!!そりゃ、惚れてまうやろ~(笑)賢くて、行動的な少年の活躍も読んでいてとても楽しく、終盤で作品タイトル『花の影を慕いて』の意味が、ああなるほど~! と、納得できる、しっかりと作りこまれた傑作です。最後にあっと驚く展開あり、読んで損はさせません。絶対に!!
その昔、クロフォード伯爵領内にあったある家から、アイリスという名の若い女性が失踪した。20数年経過したあと、今度は庭園管理をしていたアイリスの父親、アントン氏もパーティー中に不審死を遂げる。相続者のいなくなった庭園を巡り、クロフォード伯爵の息子である若き領主キアランは、アイリスの産んだ娘を調査することに。異世界が舞台設定のようですが、私は勝手にNHKドラマ「ダウントン・アビー」のような、18世紀くらいのイギリスをイメージして読みました。異世界ものにありがちな、物理法則を飛び越えた魔法っぽいことはまったくなく、登場人物たちはみんな普通の人で、ミステリーも淡々と進んで行きますが、何と言っても舞台は華やかな貴族的社交界で、煌びやかな描写が続きます!ダンスパーティーに恋の語らい、青春の甘酸っぱい群像劇に引き込まれました。異世界ものではなく社交界ドラマとして読んでもらえたらと思います。