評価:★★★★☆ 4.4
東西東西――遥か昔のまた昔。
京の都を荒せしは、天下無双の鬼の群れ。
天魔の如し力を駆使し、極悪非道の限りを尽くす。
天上謳歌の百鬼夜行。その悪行も永久に続かぬ。
種の限界を迎え来て、時の流れに消え去った。
だが眷属は脈々と、地獄へ潜って生き残る。そして――歴史に連ねし鬼の伝説が、時を超えて現代の世に蘇った。
平凡な生活を送っていた少年は、世を揺るがす大騒動に巻き込まれる。
はてさてこの少年は、調伏されし鬼を従え、救国の英雄と相成るか。
悪鬼羅刹より転生し、式神となったこの鬼は、護国の鬼神と相成るか。
強力無比な恋敵を前にして、桜花咲く純情可憐な恋心の行方は何処。奇想天外な和風ファンタジー、ここに開幕で御座候――
※ モーニングスター大賞 最終選考 新紀元社社長賞 受賞作品
※ タイトルに★マークの付いている話数は、イラストがあります
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
最初は読みにくいと感じていた独特な文体であったが、読み出し、そして嵌ってしまうと逆にそれが合うほどになる。 舞台は日本であるものの、作者の紡ぐ物語に呑み込まれていくせいか、幻想的であると感じてしまう。 そう、和風でそれでいて幻想的。 取り込まれてしまえば最後。 この作品をきっかけに和風を取り込んだ作品を読み出し、自分はまったく知らなかった世界を味わえて非常に新鮮だった。 ぜひこの世界をあなたも味わって欲しい。
まず特筆するべきは、この作品がどこか古めかしい文体で粛々と進みながらも、舞台はあくまで現代であるという点。古い紙の香りを漂わせつつも、そこかしこと散りばめられたあくまで現代であるという文体の心遣いは、確かな文章力を感じ、安心できるものです。横文字を使うときも、ルビの降り方が美しく、読んでいて心地が良く、つっかえるようなところはありません。知識と文章力、両方に裏打ちされた『和』の世界観は、思わず唸るようなものです。物語の構成は序破急としっかりと区切りがつけられ、また「ここからが魅せ場である」と分かる、かちりと嵌る切り替えが渋い。可愛らしくも格好良い、奇っ怪だけど愛おしい、面倒臭いけど小気味いい。しっかりとした物語の起伏に散りばめられたキャラクターの魅力は、読んでいてするすると虜になれることでしょう。とても良い作品でありますので、どうかご一読を。
古めかしい文体で描かれる、和風ファンタジー。文体に乱れが無いところに、まずは作者様の力量を感じます。遥か昔、京の都を荒らしつくした鬼の首領。千年もの時を超え、九百九十九人もの血肉を喰らった悪鬼は、千人目を目前にしてその力を奪われます。その力を奪った張本人こそが、主人公。武器ははったりと鉄仮面。そして圧倒的な精神力。武を持たず、智と勘と運で生き延びるしぶとさは、まさに痛快です。重厚なストーリーと、軽妙な掛け合い。そしてヒロインのチョロインっぷり。実に素晴らしいです。スカッと出来る、にやにやも出来る、そしてワクワク出来る。オススメの一冊です。それにしても、ヤクザ系TS女子か……新しすぎます。
これより皆に伝えまするは 鉄面皮なる男子高校生と 彼より謀られし鬼より転じた娘の話時は平成所は東京 一見無頼な少年が見るに見かねて助けた相手は 奇々怪々な翁なり姓は上月名は貴之 三つの掟を教わりて鬼の化身と会いまみえたあまたの血肉と怨念を すすり喰らいて幾星霜その巨躯より現われしは 元の姿と異なりし容姿端麗 短身痩躯に豊満双丘その流れる黒髪は 烏の濡れ羽か絹糸かさらに備わるチョロイン属性掟で話せぬ貴之の言葉 勝手に理解し 早合点の半左エ門少年と同じ学び舎へ行き 彼の走狗と相成らん 二人の前に現われしは 魑魅魍魎か屍か その間柄は主従で終わるか はたまた比翼連理の大団円か これより先は貴殿の眼にて確認されたし講談口調で語られる あやかし語りの ウェブラノベご高覧、お願い……仕るーー!!
TSは好きですか?歴史モノのような文体は好きですか?揺れるおっぱいの描写に力が入ってるのは好きですか?ヒロインに「なってしまった」元鬼、現あやめ。これが大層愛らしい。可愛らしい。ツンデレの様式美といっても過言ではなく、そのコロコロと変わる感情と表情は非常に愛くるしい。義理人情に厚い彼女は、進んで問題を解決に走り出すこともあり、鬼であったころが嘘のように好ましいキャラクターです。というかあれですね。黒髪リボンのおっぱいぼーんが好きなら読む価値ありますよ!めたるぞんび先生のハイエルフとは少し違う現代ファンタジーな物語を、楽しんでくださいな!
和風ファンタジーということで、文体は歴史モノ然とした書き方で進む物語。それ自体が『和』を強調しているのですが、そこに紛れ込むトランスセクシャルファンタジーの要素。「和風」なのに「ファンタジー」している部分になりますが、ここが本作品のポイントです。これが絡むことによる「ドタバタ感」が物語の魅力を引きだしていると思います。主人公が平然としている傍でヒロイン(?)が慌てふためく様子は、思わず笑みを浮かべてしまいます。序破急を重んじて丁寧に進む、『和』を尊ぶ奇天烈物語、ぜひ皆様もお楽しみ頂けたらと思います。