評価:★★★★☆ 3.9
幼い頃より慕っていた第三王子シードからプロポーズをされ、幸せだった伯爵令嬢ミラ・マクベル。
だが、ある日突然、ミラはシードに婚約破棄を告げられる。
『君に飽きた』とシードは言うが、その顔はどこか物憂げで――婚約破棄という悲恋からはじまる、ハッピーエンドの純愛ラブストーリー。
※二話完結です。
話数:全2話
ジャンル:
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:R15
完結日:2017年4月1日
作者:星影さき
このお話は所謂、王道モノだ。読み進めていくうちに容易に結末を推察することができた。だが、それがどうしたという。それでもこの作品は最後の一文に至るまで私を夢中にさせた。それが王道の王道たる所以で、それが多くの人を惹きつける要因になっているのだと思う。結末をわかり切っているのに、人を夢中にさせる。これは作品を書く上でとてつもない難易度であると私は思う。作者はそれを素晴らしいレベルの技術でなんなくクリアしている。同じ小説書きとして嫉妬した、心から。同時にそれぐらいこの短い小説に魅了された。楽しかった、心から貴方にもぜひ、この良質な物語を味わっていただきたい。
前編の時点で話の展開には二パターンが思い付きますね。バッドエンドかグッドエンド。先の予想がつくというのは面白くない、そう感じる方も居られるでしょう。先が読めるからこそ良さが際立つ。先が読めるからといってそれが評価に値しないことはありえない。起承転結、どこまでも分かりやすいお話だが、その中にちりばめられた描写は、読み終えたあとに「ああ、よかったなぁ」とホッとするに違いない。
この物語は婚約破棄から始まる、いわゆるテンプレという奴だ。それがどうしたというのだ。前話の段階で、伏線は見え見えだ。恐らくこうなるという結末も予測できる。何故か。それはこの物語が王道だからである。分かってるよ、こうなるんだろ?ほらその通りだ。だからなんだ。だからこそ、面白いんじゃないか。王道は外さない。期待通りの展開と結末を迎える。ハッピーエンドが約束された結末。だからこそ、良いんじゃないか。その王道に、作者様独特の『エッセンス』という調味料が加えられ、千差万別の物語が紡がれるのだ。この王道の物語は、一言でいうならば劇だ。人生を転がり行く女性を追って、転換し続ける場面。観客が追うは主役の女性。女性は襲い掛かる境遇に耐える。だがその悲劇の後には幸せが待っている。訪れる大団円。幸せそうな二人。万雷の拍手。これでいいじゃないか。王道万歳!