評価:★★★★☆ 4.2
「竜の星」に見下ろされ、五頭の竜の魔力によって均衡を保つ世界。
その均衡が破られてより、八年後。
両親を殺された少年クルトは、とある不思議な男に出会う。夜にだけ現れる、小さな白銀の竜をつれた、隻眼・黒髪のその男。
そして、昼にだけ現れる、黒馬に乗った美しい女剣士の秘密とは。二人の過去の秘密に迫り、少年は彼らと共にゆくことを望むのだったが――。
恋愛要素多めの、ややダーク系ヒロイックファンタジー。
とはいえ、アクションシーンは少なめです。
そしてダークだとは言いながら、結構な割合でコメディシーンも多めです…。
残酷シーンには前書きに※を入れていきます。
2016年10月20日より、カクヨムにても連載開始。
話数:全175話
ジャンル:アドベンチャー エピック・ファンタジー
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
悪によって乱れた世界に平和をもたらす勇者の物語。これがファンタジーの王道。美しいお姫様と姫を守り幸せにする強く優しい白馬の王子様。これが恋愛ファンタジーの王道。と私は思っている。この物語。ファンタジーの王道ではありながらキャラが王道であって王道でない。邪道だ!美しいお姫様とイケメン勇者ではある。あるにはあるのだが……。二人とも清すぎる。クソ真面目すぎる。故に悪者はやりたい放題。二人を見守る脇役達が気を揉む事といったら「おい!お前らいい加減にしろよ」とツッコミを入れたくなる程だ。ではあるが、脇役達が実に生き生きと丁寧に描かれ主役を引き立たせる脇役では終わらない。静の二人と動の脇役がお互いに個性を殺すことなく引き立たせ合っている。そのうちにどのキャラにも愛着が湧いてくる。そしてこの物語の真の主人公。彼に読者は同化してしまうのだ。上手い!巧みなキャラの魅せ方にはまって下さい。
大人の主要キャラに押されて忘れがちになってしまいますが、この物語の真の主人公は身分も地位もない、貧しい農村部の少年のクルトです。このクルトがニーナとレオンに出会うことで、停滞していた運命の歯車が再び動き始めていく。その様相は混迷を期し、もうこのままどうにもならないのではないかと思うくらい。クルトがいたから危機的な状況に追い込まれたり、でも、それを打破するきっかけを作るのもクルトであり。良い意味でも悪い意味でも物語を動かしていたクルトの存在。なんのしがらみもないクルトが発した、率直な言葉だったからこそ、氷のように頑なだったアレクシスとミカエラの心に深く息づき、ついにはその心を動かすまでにもなっていく。クルトがいてもいなくても、運命の歯車は動き出したはずです。でも、クルトがいなければここまでの大団円を迎えることは不可能だった事でしょう。 序章と終章のクルトの姿に、彼の成長ぶりをご覧あれ――
ある所に美しいお姫様と勇敢な騎士がおりました。二人は愛し合っていましたが、悪い王子と魔女により姿を変えられ、国を追われます。果たして二人は呪いを打ち破ることができるでしょうか。竜を冠する五つの王国を舞台にしたファンタジー。核となるのは御伽噺めいた恋物語だが、国同士の相克から創世の秘密へと広がる展開は骨太かつスリリング。その一方、理屈では割り切れない心理描写もまた巧みである。作品を貫くテーマは『愛』。主人公二人は逆境にある時も相手への想いで満たされ、逆に敵役たちは力を手にしながら空虚なのだ。彼らは得られなかった愛を求め奪い取ろうとする。身勝手なその行いに共感してしまうのは、全員の人生が丁寧に描けているからだろう。薄っぺらい登場人物は、誰ひとりとしていない。竜は言いました、『小さきものたち』と。彼らから見れば一瞬に等しい人生はそれ故に美しく輝き、次の世代へと語り継がれてゆくのです。
人生を奪われてしまったと感じた時、どう生きればいいのだろう。愛されないことに苦しむ時は?奪ってしまったことに気がついた時は?この物語を読みながら考えたのはそんなことでした。もし私なら、アレクシスやミカエラと同じような過ちを犯さなかったと言えるだろうか。レオンやニーナのように強く、優しくあれただろうか。いつしか、苦しみの最中は気づくことができなかったけれど、本当は手を差し伸べてられていたんだ、というようなあたたかさが私を包み込んでいました。登場人物たちの選択に注目してください。
圧倒的な世界観と魅力的な登場人物たち。悲恋の姫君と彼女を守る男は勿論のこと、彼らを追い詰める敵役もまたしっかりと血肉の通った人間なのです。思わず敵役である彼らにこそ肩入れをしたくなるのは不思議なほど。竜の加護はあれど、決してこの世界に無双などというものはありません。そこにあるのは、たった一つしかない命を捧げながらもがき苦しみ、愛する者をただ追い求める者たちの姿だけ。美しい姫君と彼女に仕える偉丈夫の男。彼らを隔てるのは身分ですらない。二人は相手を思いやるがゆえに、傷つき血を流す。魔女は、手に入らぬものと知りながら男の愛を乞う。踏みにじられた己を取り戻すために。愛を知らぬ火竜の王子は、暴虐の限りを尽くす。己が真に望むものを知らぬままで。愛とは求めるものではなく与えるものなのだと実感させられるこの作品。人は寄り添い許し合うことで、また新たな物語を紡げると信じ前へ進んでいくのです。
転生ものではありません。 ネットの世界に溢れる俗語卑語、全く使われておりません。 展開されているのは、練り上げられた世界観を土台とした、重厚なストーリー。 しかし決して、「陰鬱に過ぎる」ということはありません。「きちんとした」日本語で紡がれたきめ細かな描写が、アクセントとなっています。 作者さまは、絵も描かれます(『お絵かきの部屋』と題された小説を、ご覧ください)。 この絵がまた、世界観と似つかわしい、おとなの画風。併せてますます、想像をかきたてられます。 読みごたえある、正統派のファンタジー小説。 お勧めです!
以前感想を書かせて頂きましたT・Kです。 ストーリーも(過去の話が現在メインですが)進んできましたので、ここでレビューを書かせて頂きます。 結論から言ってしまうと、表題の通りです。 登場人物の心情が細やかに描かれ、しっかりとした世界観を構築し、それらの移り変わりを描く。ちゃんとした描写力がなければできないことです。それをやれているこの作品は、まさに表題の通りの作品でしょう。 ただ、気になる点も出てきました。 国同士の動きも物語に組み込んでいる以上、もう少し一般の人々の様子や軍の動きについて描写が欲しいと思うのです。それと細かに心情を描いていることの弊害か、じれったいと感じてしまう時もあります。余分な部分を削れば、テンポもよくなるのではと思いました。 悪い点も書いてしまいましたが、良い作品であるのには変わりありません。今後のストーリーも、一読者として楽しみにさせて頂きます。