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 世界を否定する。それは同時に、全ての生命と争うことを意味している。
 空には天空の覇者である火竜が住み、渓谷には獰猛な翼獣が群れている。大海には果てしなく巨大な海王類が身を潜めるそこは、人が最も非力な世界。
 弱肉強食の底辺たる人間達は、明日の我が身を心配する暇も有りはせず、一片の脳裏に過ぎる仲間の断末魔の叫び声だけが、身を震わせていた―――――そんな時代。
 空には恵みが、森には芽吹きが、海には神秘が、こんなにも満ちているというのに。
 誕生、生命、輪廻、殉教、死別、創造、破壊。あらゆる理は万物の元に実行され、その全てが万物の上に成り立っている。
 天は人に生きる意味を与え、存在するその意義を教えた。しかし人は実行せず――。
 愚かにも臆し、怯み、嘆き、もがいた。
 すれば後(のち)、朽ちた人間達の行く末に、一組の男女現れる。
 或る者は言った――意志無き者に存在する価値はない。力無き者に明日の陽の目を見る資格も有りはしない、と。
 彼の者は言った――竦(すく)んだ足を切り落とせ。震えた腕も引っこ抜け。臆した心は抉り出せ。弱き者が強くなる為には、犠牲を払い積み上げろ、と。
 して、或る者と彼の者は人間達に知恵と勇気を授けた。
 雲を払い、森を潤わせ、大海を裂き、その天災の元、荒野に緑をもたらしたのだった。
『其の力、想いにありけり』
 男女はその言葉を残すと、静かに消息を断った。また、この二人が見せた人ならざる力を、人は総じて『奇跡』と呼んだ。
 それから二〇〇年後。人は或る者と彼の者、二人の教えを胸に、ついに弱肉強食のカーストにおける底辺を脱した。対話という手段を用いて、他の生命との共存を手に入れたのだった。
 人はそれを【想世紀】と呼ぶ。


話数:全8話

登場人物
主人公属性
  • 未登録
職業・種族
  • 未登録

時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録

その他要素
注意:全年齢対象