月の湯へようこそ 完結日:2017年4月29日 作者:秋月 忍 評価:★★★★☆ 4.2月野千夏は銭湯『月の湯』を経営している。 ある日、千夏が番台に座っていると、女性が助けを求めてきて……。 昭和40年代後半から50年代前半頃を舞台とした、千夏と幼馴染の徹とのベタな恋愛。 <昭和の日企画>企画参加作品です。 話数:全7話 ジャンル:仕事もの 登場人物 主人公属性 女主人公 職業・種族 未登録 時代:未登録 舞台:未登録 雰囲気:未登録 展開:未登録 その他要素 幼馴染 日常 銭湯 注意:R15 なろうで小説を読む
銭湯――入ったことないんですよねぇ。憧れるし資料は集めるんですけど、身近には無い。夢ですね。うむ、書きたいことは他の方が素晴らしいことを語られていますのでわたくしめはささっと。灯台もと暗し、番頭として銭湯を見回していると足元を見落としがちになってしまう。すっと喉を通る、けれど鰹節の香りが後を惹く、素麺のようなお話です。
今はすっかり数を減らした銭湯も、昭和という時代においてはある種の風物詩。常連客同士の気の置けない会話に、風呂上がりのコーヒー牛乳、ツケだって当たり前。そしてもちろん世間話では、ちっともその仲が進展しない焦れったい男女のことだって話題にのぼるのです。気づいてほしい、気づいてほしくないそんな主人公の微妙な乙女心。二十六歳という当時としては嫁き遅れと言われる女性であり、家庭環境の難しさもあるからこその自信のなさ。そんな彼女の思うように相手に伝えられない恋心は、切なくもあり、だからこそまた時代を超えて共感されることでしょう。いつも通りの秋月流の王道ジレジレすれ違いに加えて、今回はしっとりとした艶やかさも気前よくサービスされています。甘いだけではなく、大人の魅力もたっぷりな本作、どうぞご賞味あれ。なお読み始める前に、素麺をご用意しておくことをお勧めいたします。まさかの飯テロに要注意です。