評価:★★★★☆ 4.2
「ふっかつのじゅもん」があったから、俺たちはずっと一緒に居られた。
レトロゲームの思い出の中で語られる、君との大切な思い出。たった20文字の中に込められた、積み重なった時間の重さを、いつまでも覚えている。
■【昭和の日企画】参加作品です。
■「アラフォーほいほい」作品です。昭和の最後に子ども時代を過ごした、多くの同世代の皆さまに捧げます。
話数:全2話
ジャンル:
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象
正確に書き写しておかなければならなかった。その文字の羅列に意味はないのに……。 これは、昭和のある一時代を席巻したゲームのセーブ方法だった。 このセーブ方法を知っている読者さまは、懐かしさを覚えながら、この物語を楽しく読めるはずである。 そして、残念なことにこの時代に生まれていない読者さまたちは、意味のない文字の羅列に意味が生まれたらどうなるのか、わくわくしながら読んで欲しい。 読者の皆さまも、これまでに受け取ったたいせつな人からの言葉に、この物語のような素敵な意味を探してしまうかもしれない。 理想の幼なじみが、理想のふたりの繋がりになる。 とても、優しく、ドキドキさせられる物語だった。
昔のRPGゲームのセーブ機能は「ふっかつのじゅもん」と呼ばれるパスワードを入力することが必要だった。それを利用して「ふっかつのじゅもん」を書き写したノートを交換して一緒にRPGゲームを進めていったというのが、今作の大筋である。今ではもはやできない交換ノートに違いあるまい。最近のゲームではメモリーカードも消えHDDに直接保存されるものがほとんどだからだ。一緒にプレイすることのできるCOOPゲームもあるが「ふっかつのじゅもん」の交換ノートのようにはいくまい。あれには色あせぬノスタルジーがあると思うのは私だけではないだろう。しかし、今のCOOPゲームで芽生える恋もきっとあるに違いない。「初の共同作業だね」、なんて言ったりして。
“さて、テニスから始まりインベーダーを経て家庭用ゲーム機への変化。今はスマートフォンのソーシャルゲームに立場を奪われつつある、そんな家庭用ゲーム機の話――というわけではありません。ふっかつのじゅもん。これは某ゲームをやったことがあれば誰もが知ってるものですね。そして話に出てくるものは全部、誰もがどこかで感じたことがある、聞いたことがある、もしくはやったことがある話。どんな時代でもきっと変わることのない、色褪せないふっかつのし””ゅもんはいかか””て””しょう?”
スマホ世代の方には想像できないかもしれない。携帯の待ち受け画面よりも低容量のデータで、あの名作ゲームは作られた。たった64KBのデータは、当時の子どもたちに大きな衝撃を与えたのだ。学校の先生も、あまりの影響力に大慌て。注意をする大人もまたゲームにハマる始末。昭和という時代、街頭テレビの力道山に熱狂する人々の様子も驚くべきものだが、この新しい娯楽にのめり込んだ私たちの熱量だって負けてはいない。あれに出会って将来の夢を決めた子どもたちだっていたはずだ。クリエイターやプログラマーという言葉は当時一般的でなく、男の子たちは「ゲーム屋さんになりたい」と言って、母親にひどく叱られたもの。そしてあのゲームがなければ、将来の夢が変わっていた女の子だっていたかもしれない。今度の休日には、家族揃って遊んでみるのもまた良いかもしれない。思い出は色褪せることなく、今を鮮やかに彩っている。
昔、ゲームにはセーブ機能などなかった……。パスワードを手書き。これはそんな時代の話……じゃありません。復刻されたファミコンミニを前に思い出話をする……という話でもありません。『ふっかつのじゅもん』という言葉で繋がった二人の幼馴染が、それぞれに求めた幸せを掴む、そんな二人の絆を描いたお話です。ふんわりと幸せな気持ちになりたい、そんなあなたにオススメの話。