評価:★★★★☆ 4.3
天下に轟く武術の奥義書『太白精典』。その所持者、鬼一法眼が姿を消した。武術界の頂点に君臨し、天下人平清盛も源頼朝もその存在には一目置かざるを得なかった。齢(よわい)は疾(と)うに百を越えているという。時は承久の乱を経て、数年。幾ら鬼一法眼といえども生きてはいられないだろう。
では、一体誰が換わってその座に就くのか。天下を跋扈(ばっこ)する猛者(もさ)たちも女子供のように噂する。
天下第一は鬼一法眼の弟子、鞍馬僧の七人の内、誰かなのか。あるいは比叡山『四身式』の鶴丸なのかもしれない。いや、他にも高野山『三武書』の遍照、愛宕三山『周天廻宝』の半眼居士、大峰山『役三行』の宗憲法印、三井寺『福聚輪』の空尊と名だたる英傑がいる。彼らは各山の奥深くで息をひそめ、天下の趨勢(すうせい)をうかがっているという。
ひょっとすると、彼らとは全く別の、武術界に名を列(つら)ねていない誰かなのもしれない。それならば、平安京を騒がす怪盗、黒覆面の男は外せないだろう。急速に名を挙げて来た若者、鍋倉澄も忘れてはならない。比叡山の『征矢(そや)』、『七歩蛇(しちふじゃ)』の異名を持つ二人の怪物を事もなげ倒してしまった。聖堂門の出であるにもかかわらず念仏門の味方をする狂人にして、竜笛(りゅうてき)の名手。ただ、忘れてはならないことがある。………『太白精典』。鬼一法眼はその奥義を以て天下に名を轟かせた。その『太白精典』を手に持つ者、まだ見ぬ誰かこそが天下第一ではなかろうかと。
話数:全89話
ジャンル:異能バトル
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:鎌倉時代
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象
ハッキリと言います、物語の構成力には並々ならぬモノが有る、そんな秀作です。この作品の真価は、構成力とキャラの描写に有ります!!設定やキャラの個性は有って当たり前、そこに時代の生活感や歴史背景までが実に上手く描写され、実際に読むだけで『その時代を想像出来る』と言う…ソコに、先が楽しみになる文脈から、ご都合主義でないキャラの考察を経ての行動の選択。そこに違和感がなく、思わず納得させられる現実感。間違いなく面白く、小説家を目指す方々も何かを吸収出来る、そんな作品です。更に、恋物語の要素も入っており、ソレがクドくならない程度に描写され、更にキャラの個性が色濃く反映されており、読み進めていくと、思わずホッコリとしてしまいますよ?是非御一読を!間違いなくオススメの時代活劇恋物語ですっ!!←クドい(笑)
『男には男の世界がある』 ぐっとくるではないか。武芸に血も汗も、魂すら捧げる男たちがいる。「我こそは!」と自負し、敗ければ命もそれまでよ、とばかりにぶつかり合う。 そこへ華を添えるのはやはり女たちだ。水干姿で冷たき美貌の霊王子。そしてその名を都中に轟かせる美女、月見。 伝奇アクションである。平家滅亡から四十余年の鎌倉時代。かつて天下第一と謳われた鬼一法眼の奥義書『太白精典』をめぐって武芸者たちが入り乱れる。 平家の残党やら邪教やら、怪盗・黒覆面なんて、冒険心をくすぐる奴らが出てきて思わずニヤリとしてしまう。 手に汗握るアクションだけじゃない、主人公の鍋倉 澄が魅せる人柄の良さも高ポイントだ。 伝奇物と言っても、構えることなんてないのである。時代劇を見るつもりで、はたまた、和製ファンタジーを読むつもりで気軽に覗いてみてほしい。確かな文章力が物語に引き込んでくれるだろう。