評価:★★★★☆ 4.4
彼は私に愛は吐くが、けして触りはしなかった。
時は大正。舞台は花の帝都――ではなく、地方の港町。
雇われ漁師を父にもつ沙耶子の元には、今日も彼が訪れる。
老舗商家の放蕩息子。常に洋装を身にまとう、町一番のハイカラ男子。人生の選択を先延ばしにしてきた姉御肌の沙耶子と甘えたの年下男子が、春を翳らす不審火をきっかけに将来を決める話。全22話。
※一見紳士然としたヒーローですが、実際は変態です(作者基準)。
終盤にそういった展開がありますのでご注意下さい。
話数:全22話
ジャンル:ヒーロー・アクション
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
文字の合間から、潮騒が聞こえてくる。大正ロマンの響きに混じり、さざめくように。 例えば言葉を重ねても、本当に伝えたいことを伝えられるとは限らない。 自分が表現したいことを、上手く表現出来るか。表現出来たとして、それを相手がそのまま受け取ってくれるのか。 そこには幾多の困難があり、実のところ難しい。 女は婚期を少し過ぎ、その荒れた手をじっと見る。華やかな世界とは無縁。それに後悔はないものの、思いにふけるときはある。 そんな女を、男は慕う。田舎町には珍しいフロックコオトをはためかせ、ただただ甘い笑みをその端正な顔に浮かべて。 二人は気持ちを伝えようと、分かりあおうとするけれど――果たしてそれは上手くいくのか。静かに、ゆっくりと語られるは、素直でされど不器用な男女の姿。 ペエジをめくると、潮騒が聞こえてくる。大正ロマンの響きに混じり、ただあなたを物語の海に誘うように。
港町と申しましても、ヨコハマではございませぬ。潮と土の香りが入り混じる地方の港町の、いつもと変わらぬ春のおとづれ。毎日農作業に勤しむ現実主義者な女子と、彼女の元へ足繁く通う浮かれた様子のオシャレな青年。二人はその距離感を変化させられず、いつかくる岐路を霞の向こうに見ながら、日々過ごしておったのですが……。二人の住む世界の違いを、彼女は卑屈にならず現実として見つめ、今ある幸せな時間を過ごしている。私は作者が描く、そういう表現が好きです。この事件が起こらなければ、二人はきっかけもつかめずに、このまま道を分かつことになったんじゃないか、と思うくらい。胸キュン(死語?)さて、その事件については読んでのお楽しみ。全22回毎日更新。現在16部まで掲載済です。大正期の様子の丁寧な描写と、密やかなエロスもオススメポイント。我こそは乙女!という方、是非一緒にラスト迄愉しみませんか。