【黒の装殻】シェルベイル 完結日:2017年5月13日 作者:peco 評価:★★★★☆ 3.9 本条ハジメは世界初の人体改造型装殻者である! 彼は己の信念の為に、今日も闘争に明け暮れる。 日本海沿岸に位置する人工半島、フラスコルシティ。 幾度も世界を救った英雄であり、現在は世界的な指名手配犯である黒の一号は、この街で一人の少女を殺した。 彼はなぜ、少女を殺したのか。 話数:全45話 ジャンル:ヒーロー・アクション 異能バトル 登場人物 主人公属性 男主人公 職業・種族 未登録 時代:未登録 舞台:未登録 雰囲気:未登録 展開:未登録 その他要素 特撮 群像劇 注意:R15 残酷な描写あり なろうで小説を読む
私は元々紙をベースにした小説が好きだ。一枚ずつ紙をめくる期待感で物語に入っていくのが堪らなく好きなのだ。ここ、なろうで小説を読み始めて、私が初めて紙で読みたいと思った小説がこれだ。主人公、黒の一号は、この街で一人の少女を殺した。過去幾度も世界を救った英雄が、だ。その謎を追う為に、次々と主軸となる登場人物が出てくるのだが……私はそれぞれの主人公と共に悲哀し、渇望する。力が欲しいと願うのは、何も物語の中だけの話ではない。これを読了した時、自分は何を望み、掴み、何を諦めるのか。ぜひ、投影して読んでみて欲しい。そして、私がこの物語を紙に、と望む理由も、読めば納得して頂けると思う。
正義とは、人の為に戦い、悪を絶ち、まばゆいほどの光で人々を照らすものである。 しかし本作の主人公は闇に堕ち、正義を騙る。己の信念を貫くため、テロリストとなって戦う。 彼が求めるものは、正義を司り、人々を導くことでも希望の光になることでもない。 ただ、ひとつ。 人々に平和を、救いを。 ただそれだけの為に彼はつき進む。 ……弱さを抱えたまま……。 しっかりとした世界観、練りこまれた話の展開、それらを背景に繰り広げられる緊迫した物語があなたを惹き付けます。 ちょっぴりとっつきにくいかもしれない。しかし読後あなたにもたらされるのは、燃えるような満足感です。 この作品は登場人物たちの想いを、信念を、成長を、策略を、葛藤を、熱くあなたの胸に響かせることでしょう。 さあ、あなたの中の熱い心に火を点し、『【黒の装殻】シェルベイル 』の世界を駆け抜けろ!
ヒーロー、その在り方がどんなものかは答えなど永久にでることはないだろう。これは人間の心が個々人によって独立している限り永久に解決されることはないし、人間の意志が同一化する社会なぞ見たくもない。それでも人は他人と違うからこそ、誰かのためにという思いがあると私は信じている。隣人愛という言葉が近いだろう。 ゆえに正義とは個々人によって千変万化するものだし私はそれでいいと思っている。 正義の敵は悪である。世の中はそんなに単純ではない。 だからこそこの物語にひかれた。単純な勧善懲悪ではない。重きを背負って微塵も揺るがず守るべきものを見定めて毅然と立つ。 誰もがこうありたいと一度は願い、されどかなわない夢の形……その完成系が私のなかでは黒の一号だ。 正義を『語る』のではなく『騙る』。この違いを作者は私たちに圧倒的な描写力で教えてくれる。 これはそんな答えのでない物語だと私は思う
以前レビューを書いたのだが、完結を期に再度余見直したことで感じたことを書こうと思う。 この作品に出てくる主人公とは誰か。恐らく、ほとんどの者が主人公であると断言しよう。各々に命題があり、それに殉ずる生き方をしている。 皆が異常だ。異常な世界に生き、超常の能力を持つ。そしてそれらが己の思い一つを牙として食いあっている。 普通の人からすれば正気ではない。道徳の視点から見てもこの物語の者たちは正常ではない。異常の塊だ。始まりから終わりまで徹頭徹尾勧善懲悪ではないと私は読み、だがしかし、だからこそ彼らはヒーローなのだと私は考えるのだ。 ヒーローとは何か、この作品を読んで少し考えてみるのも面白い。 ああ、この作品には続編とも呼べる作品があるので続けて読むと効果が倍点だから良い。 それと私はア、いや、これは今語るべきことではないだろう。
とにかく最後まで気持ちよく楽しめる!それでいながら、ヒーローとは何かを考えさせられて、心に響き、読み終わった後の満足感がものすごい!これ以上、何も言う事がない、最高のヒーロー小説です!人を救うという単純な目的を達成するために、様々な苦難を乗り越えていく、真のバカ、黒の一号の壮絶な戦いを、ぜひご覧ください!
全然関係ないですけど、「殻」っていう文字は燃えます。そして、黒はすべてを隠す、そしてその下に隠れるものを見たいという欲求をかきたてる色です。黒い「殻」が読者の心をアツくかきたてないはずがありません。失礼しました。pecoさんもこだわっておられる「正義を騙る」という言葉は、結局のところ、正義は人の数だけ存在するという真実に直結し(あれ、わたしがそう思っているだけ?)、読んでいるものの心にさざ波を立て続けてくれます。読者は自分の思う正義と違う正義を突きつけられ、「黒の一号」と素直に自分を重ねられないことに悩みながら、それでも「黒の一号」の正義を理解したくて先を急ぎます。自分と向き合いながらヒーローの物語を追える、一読で何回も楽しめる作品であると思いますが、それもこれも「黒の一号」が、読者をそうさせる魅力的な存在だからこそでしょう。さあ、きみにとっての正義はどこだ?
変身ヒーロー。それは幼い頃に誰もが憧れる存在であり、そしてそれゆえに歳を重ねるにつれて「卒業」していくものである。 大多数の人にとっては、小さな頃の思い出でしかないその「ヒーロー」という存在の意味を、どこまでも綿密に追及していくこの物語は、「ヒーローものは子供が見るもの」というあなたの常識を覆してくれるだろう。 英雄的行為というエゴゆえに災厄を振り撒き、その十字架を背負う「黒の一号」。彼は正義を騙る修羅として、ただ独り己の道を歩んでいく。その果てにある終着点は、破滅か救済か。 あなたも是非それを確かめて、「正義」とは、「ヒーロー」とは何か。その答えを見つけて欲しい。