評価:★★★★☆ 4
インキュナブラ大陸は北西に凍土、東に火山と砂漠を有し、人間の生きられる場所は限られていた。この十数年、魔王の影響で凍土は拡大し続けている。凍土を封じ込めていた分厚くて巨大な三重の隔絶壁すら凍りつき、北の守りを固めていた聖火国はすでに風前の灯だった。だが、隣国のマイヤールは動かない。いや、動けない。元々三つの小国が手を結んで一つになったマイヤール国は微妙なバランスの上に成り立っている。下手に軍を派兵し潰えては街の太守が反旗を翻すだろう…!
腐った大人たちの事情に振り回されるのはいつも子どもと決まっているもので。十一歳のリリアンヌは叔父に放り出されて勇者を目指す!? 力が全てな脳筋たちの世界で、元深窓のご令嬢は男装して頑張ります。半呆け師匠にマセガキ盗賊にムキムキなお兄さんにと愉快な仲間が賑やかす。魔物が跳梁跋扈するこの世界で果たして少女勇者は魔王を倒せるのか? 悪漢だらけの(社会性が)ダークなファンタジーの開幕です!※後々残酷な描写が出てきます。鬱展開になります。地雷はどうか分かりませんが、とうていハートフルストーリィになりそうにないので、自己責任でどうぞ。
※アルファポリス様にも同じものを投稿しています。
※校正終わりました。これで読みやすくなっているはずです。リリアンヌの従弟の名前をセドリック・リドルからレイモン・リドルに変えております。2018.04.27.
話数:全99話
ジャンル:アドベンチャー
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
兎に角、胸が熱くて焼け焦げそうでした。本格ファンタジーです。だけど、そういうと少しお堅いイメージが湧くかもしれません。違う。そうじゃない。お手軽なテンプートに頼らず、古典ファンタジーの世界観をベースに、泥臭いほどきっちりと作り込まれている。そしてそこに生きる人々は、時にシリアス、時にコミカル、時にポップに描かれているんです。ぼくが思うこの物語のもっとも素晴らしいところは役者。個性的な人物像と、丁寧に丁寧に描写される人間模様。やや不幸な生い立ちで始まるヒロイン、リリアンヌの人生を追う物語なのですが、それを取り巻く人々が、ひとりひとりが多面的に描かれているんです。悪い人にも良いところがあったり、勇敢な人にも臆病なところがあったり。そんな人たちが愛おしくて狂おしくてたまんない。ぜひそのリリアンヌの出会いと別れにロールプレイ(追体験)してください。めちゃくちゃ面白いです。
少女にふりかかる出来事がもう酷いし辛い……何度も「ああああああ!!!」ってなった。いや~まじか~……って読み終わった今でも引きずってます。(いい意味で)特に三章から最後までは凄くドキドキしました。最後は夜更かししてまで読みましたよ><止まらなかった……!!重い話でしたけど、読んで良かったです。うん、良かった。面白かった!!
「魔王」なんてだいそれたものを倒すのって、大人だって難しいんじゃなかろうか。多少なり剣や魔法が使えたって、相手は、「魔」の王」なんだぜ?そんな、魔を統べる強大なものを倒そうって、どう考えても責任が重すぎるのに、それが出来る人は限られていて、しかも、まだ子供なんだっていうんだから大変だよ。主人公が持つ、純粋さや浅はかさ。それは良くも悪くも、等身大の子供らしさ。良い人、悪い人、守ってくれる人、攻撃してくる人。いろんな人の波に揉まれながら、一生懸命に生き抜いて、自らの使命を自覚し、葛藤し、時には誘惑にも負け、成長していく主人公の姿が丁寧に描かれた作品です。世界って、子供のように不安定なんだね。
リリアンヌはまだ11の少女。辛い人生を歩んだ彼女に、最大の不幸が訪れる。「代わりに勇者となって倒しに行きなさい」彼女がうまれた国は、魔王を倒すため男子を勇者として外に出す王命がある。リリアンヌがいたところにはちょうど背格好の似た男の子がいた。もちろん親なら自分の息子を見殺しにするようなことはしない。リリアンヌは、そのための犠牲となる──彼の代わりに出陣することによって。突然放り出された彼女に待っている過酷な運命。彼女が失った希望というもの。彼女は魔王討伐と彼女自身を取り戻すことができるのか。バッドな始まりだが、そのストーリーはとても良いその細かい心理描写と背景描写、動き。皆さんも最悪から始まる旅にひきこまれる。
この世を破滅に導く魔王と戦うことを運命付けられた少女リリアンヌ。様々な出会い、導きを得て、その能力を獲得していく彼女。恋を伏せ、己を偽り、ただそのためだけに生きてゆく健気な少女。それなのに、彼女にはたった一つ足りないものがある。それは、魔王を倒す勇者の心。彼女は、いつ変わるのか、いつそれを獲得できるのか、魔王に一歩一歩近づきつつ、過去の因縁、己の宿命に向かい合う姿にエールを送りながらも、今度こそ、今度こそは、と呟かずにはいられない。少女が本当に望んだ自分の姿とは…。皆さんも、リリアンヌと一緒に魔王を倒す旅に出て、魔法を駆使し魔物と戦い、素晴らしい仲間と触れ合いながら、――自分なら、どう選択するかを、ちょっと真面目に考えて欲しい。
何と苦しくもどかしく、不完全な世界であることか。作者が紡ぐ物語は、決して安穏たる幸せを貪る世界ではない。人々が悩み、苦しみ、嘆き、もがく様が丹念に綴られ、時として私たちは絶望の淵へと突き落とされる。希望の光は遠く、その揺らめきさえはっきりとはしない。それでもこの世界の行く末を追いかけずにいられないのは、この暗澹たる世界が余りにも美しいものだからだろう。苦しみの中で時折垣間見える日常には、ささやかな幸せがにじみ出ている。何より、この世界で生きる人間が愛すべきものだということを作者はよく知っている。完璧な世界がないように、完璧な人間もまた存在しない。誰もが迷い、間違い、そしてそのたびに問われ続けるのだ。歩みを止めたとき、考えるのをやめた時、それこそがすべての終わりなのである。何かを成すために前を見つめ続ける人々は、確かに美しい。例えその想いが誰にも理解されないのものだとしても。
あ、決して「。」を「?」に置き換えないように!(笑)主人公の少女リリアンヌは、物語のはじめから人生ハードを通り越してナイトメアモード。いきなり強○されそうになるわ、ドブネズミみたいな爺さんの世話になるわ、出会った男にいきなり唇奪われるわ、呪文書のDちゃんに虐められてひどい呪いを受け入れるわ。色んな人々と繋がりができ、大事に思われているのに、本人はいつ死んでもいいと思っているぐらいネガティブ。本当にどん底状態で、こんなんで魔王倒せるの? リリアンヌは幸せになれるの? 主人公より先に読者の心が折れそうになるよ!(笑)でもしかし。読むの止めるの勿体ない! 苦難は乗り越えた先にこそ喜びがある。どんなに悲惨な未来が見えても、彼女たちはギリギリの所で決して諦めなかった。だからこそ掴み取った幸せに価値がある。それがどんなに、ささやかなものであっても。
タイトルを読んで私は「勇者が世界を救って、皆が平和で、そして誰しも幸せになる小説」だと思った。あらすじを読んで頂けると分かる通り、全く違う。まッッッッッッッたく、違う。鬱なダークファンタジーだ。読みながら胸が痛くなる。もっと、〇〇だったら違う平和な世界が、もっと、××だったら幸せになれた世界が、あったのだろうかと仮想の未来を想像して胸が痛くなる。幼い主人公が傷つき、悩み、苦しみながらもがく姿。私は現実で失敗をしてしまった自分が、足掻いている姿に重ねてしまう。その先の未来に例え救いがなくても、読んでしまう文章と世界観。「どうして」と後悔しないように、今を懸命に生きようと勇気を主人公…リリアンヌとジョーから貰っている。
主人公のリリアンヌは11歳の女の娘。1話で弟の身代わりにされ、無理矢理魔王討伐を命じられる、なかなかにハードなはじまりです。これ以降も、11歳の幼女がボコボコにされまくったり、食事中にはお見せできない描写が続いたりと、鬱々とした展開が繰り広げられます。けれど、不思議と読後感は重苦しくありません。そして、主人公のリリアンヌ。彼女は周囲から疎まれて育ってきたため、人形のように感情を殺した女の娘、という設定です。けれども、彼女の心の声は実に多種多彩で、振り子のような感情の動きを見て取れます。これはきっと、作者様の心の優しさが現れているのだろう、と勝手に思っています。男の「ジョー」と名を変えたリリアンヌは、身勝手な世界で生き抜くことを模索しはじめます。そのひたむきさに、多くの読者が「頑張れ、頑張れ」とエールを送らずにはいられないでしょう。
実に巧いタイトルだと思った。迫害、そして度重なる不幸。この作品は、まだ思春期にも満たなき幼い女の子が大人のえげつない事情で突然過酷な世界へ放り出され、懸命に生きる道を模索する場面から始まる。例えるなら、それは絶えずどぶ川の中をあてもなくさ迷うような陰惨きわまりない世界だった。彼女が見出だした一縷の希望は人の暖かさ。でもそれだけでは足りない。残念ながらジョー(リリアンヌ)には足りないのだ。──まだ、まだ彼女は救えない。読者は祈る。電子の壁を越え懸命に、真摯に祈りを捧げる。それしかできないのだから。だから、どうか、どうか、このか細き希望に、一抹の光を──。