評価:★★★★☆ 3.8
天孫降臨より三千と数余年、災禍続く。悪鬼の戯、甚しく、世、大いに乱れる。悪鬼鬼神、人心を惑わし、以って世を欲さんとす。民、憂えて呼ばむ。禍の世来けり、と。
(宝史伝 天錦の章より)世界は百年前から変化を続けていたーー。
四大国の一つ、碧の国の長姫である、克羅藍。碧の宝と称される少女はしかし、隣国、紅南国との戦争によって、友を、家族を、そして祖国を失ってしまう。
逃げ惑い、あてもなく彷徨う藍。そんなとき出会ったのは、昴という謎の少年であった。
碧の国滅亡の裏に見え隠れする、悪の化身、夜叉。三千年続く世界の、始まりから続く、神々の縁。
藍と昴の旅は、やがて他国を巻き込み、世界の在り方をそのものを揺るがすできごとへと繋がっていくーー。ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
古代日本、古代中国の神話に構想を得た和風ファンタジーです。前半暗いですが、後半盛り返します。
話数:全63話
ジャンル:エピック・ファンタジー
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
本格、古代和風ファンタジー。二十数年前に出会った荻原規子さんの勾玉シリーズが大好きで、同じような世界感を味わえるオンライン小説を探し求めてたどり着きました。重厚な文章。国ごとに違う風景や政治体制まで、鮮やかなイメージが広がる細かな設定と世界の描写。若くて見目の良い少年少女が心を交わし、世界を巻き込みながら、三千年来の運命の終止符を打とうとする、その旅路。確かに文字数も漢字も多いです。でも、彼らの運命と心の移り変わりにぐいぐい引き込まれ、目をしょぼしょぼさせながらも読む手が止まりませんでした。流行りのサクサク読めるオンライン小説ではありません。でも、苦悩と苦難の末の大団円に、このお話に出会えて良かったと思わせられる。読み終わったあとの甘い清涼感がたまりません!
三千年という壮大な歴史の裏に隠された神々の真実と、人々の運命を巡る激動の和風ファンタジーロマン、完結。 亡国の姫となった藍と、彼女の前に現れた謎の旅人、昴。様々な出会いと別れを繰り返す彼らは、やがて世界に秘められた真実の一端に触れてゆく。 神と人の世で紡がれる、生と死と愛の物語。 細かくも重厚な世界観と、随所に散りばめられた筆者の思想、登場人物たちも個性がしっかり描かれており魅力的です。 読み進めるうち、心に生きていく為の杖が生まれたような気分でした。挫けそうな時、負けそうな時、全てが嫌になった時、自分に落胆した時、周りが見えなくなってしまっていた時。優しく背中を押して、励ましてくれるような物語。 愛すること、生きること。幸せになること、誰かを守ること。自分を大切にすること。様々なことを考えさせられる作品です。