評価:★★★★☆ 4.3
桜の花弁舞う四月、主人公たちが通う青梛大学は新年度を迎え、新生活に心を躍らせる初々しい新入生が大挙してやってきた。
新入生を巡って各サークルが熾烈な争奪戦を繰り広げるその最中、サークル棟のある部室で、カーテンがズタズタに切り裂かれる事件が発生した。質の悪いイタズラに気味の悪さを覚えつつも平穏に続いてゆく日常。しかし数週間後、同じサークル棟で、桜色に彩られた首のない女の死体が発見される。狂気と美意識、歪んだ恋愛感情が複雑に絡み合う、新機軸の青春ミステリ。
ネット小説大賞6二次選考通過作品です。
※本作はアルファポリスでも公開しています
話数:全27話
ジャンル:
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
死体と桜はこの上ないくらいに相性がいいと思う。桜の下に人は死者の影を見て、そして死体を連想するからである。だからもしあなたが人を殺してしまったときは、桜の下に埋めると良い。きっとそうすればそれは数多の不可思議な謎の花を咲かせて、その花吹雪の中に真実を霞ませていくでしょう。だから、あなたがもし大切な殺人を犯したときは、ひっそりと桜の下に埋めると良い。そうすればきっと誰にもしれないあなただけの秘密となって、永遠に残る罪のミステリとなるからである。
この物語は愛の物語です。ただ、それが素直なものとは限りません。だからこそ、3つの事件が起こります。事件に共通することは、何かが『切られる』ということ。1つはカーテン。もう1つは女子大生の首。この2つはどうして切られたのか。あなたにはわかるでしょうか? そして、最後の1つは『何』が切られたのか。物語を読み終わったあと、あなたは見ていた桜がいかなるものであったか、驚くと思います。ひとくちに同じ桜の花言葉といっても様々です。ソメイヨシノは『純潔』。シダレザクラは『ごまかし』。不思議ですね。同じ桜なのに。
ミステリーは苦手、推理には興味がない。それだけの理由でこの作品を手に取らないのは間違いです。ジャンルこそ推理ではあるものの、これはねじれた想いを抱える学生たちの恋愛模様を描くヒューマンドラマ。少しずつ歪んでいく感覚の中で、あなたは自分の価値観は正しいと最後まで思えるでしょうか。物語の舞台は東北。とある大学の部室で、カーテンが切り裂かれる事件が起きました。さらに数週間後、首のない女子学生の遺体が発見されたのです。同一犯の仕業なのか。なぜ犯人は首を持ち去ったのか。果たしてあなたは、その理由に辿り着けるでしょうか。愛情というのは、どこか傲慢なもの。合理的とは程遠く、倫理や規範と言われるもので縛ることができなければ、加速し、どこまでも破滅に向かう厄介な代物。登場人物の心が手に取るようにわかるあなたには、もしかしたら素質があるのかも。桜咲くこの季節に読んでほしい作品です。
一話目から更新読みしています。面白いので、どのタイミングでレビューをいれるか迷っていました。そして、「今しかない」と思いました。死体が、出来上がりました。最新話。首のない死体が、大学の物置のなかに。ある種神聖な儀式のような。散らかった室内。そのなかで、唯一整った場所。リノリウムの床が白く光を反射する。魔法陣のように美しい円形の中央に、裸の女性が横たわり。首が無い。