評価:★★★★☆ 4
滋賀県近江八幡市を観光中の大学生、伊吹栄三郎は突如元禄8年(1695年)にタイムスリップしてしまった。
そこで彼は持ち前の人当たりの良さと近江商人としての心構えで、傾いた商家を建て直すことになる。やがて彼を支える商家の娘、奉公の女中、盗賊の少女ら多くの仲間とともに、悪徳商家との競り合いや蝦夷での商路開拓など様々な困難に立ち向かい、ついには日の本一の商人を目指す!
商都近江八幡を拠点に「売り手良し・買い手良し・世間良し」の「三方良し」の精神で江戸時代の日本の産業を盛り上げた近江商人の活躍を、現代人の視点で追体験する時代小説。
2017年5月17日、短編で近江八幡取材レポートエッセイを掲載しました。
『近江商人シリーズ』をクリックしてご一読ください。
話数:全74話
ジャンル:
時代:近世
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象
未来から来た主人公が行商をする内に多くの人々と出会い、地元の人とは違った視点で見ることで新たな商品を発掘し、阿漕な商売をする者がいれば諌める。一見すればただの知識チート小説と同じようにも見える。しかしこれだけの事と思いきや、その下地となる作者の知識と筆力で、読者を最後まで飽きさせずに期待させてくれる。読めば読むだけ当時の生活風景や登場人物の機微までもがありありと浮かぶ。最高に楽しませて頂きました。
本作品では、主人公が江戸元禄期にタイムスリップして、可憐な少女の人助けから、江戸時代の商人という人生を歩むことになります。江戸時代の商人という珍しい主人公の設定が興味をそそります。江戸時代の商人というと、賄賂を利用して権力者に取り入るような、悪徳商人というイメージをつい持ってしまいがちなのですが、そのようなことは全くありません。主人公は近江商人として様々な困難に立ち向かうのですが、近江商人には「売り手良し・買い手良し・世間良しの三方良し」というモットーがありますので、主人公の周囲の人物を幸せにしていくという、痛快な成り上がりぶりを見せてくれます。様々な登場人物も魅力的に描かれていて、次はどのような商売をするだろうとの期待感が癖になるストーリー展開です。