評価:★★★★★ 4.5
「なあ犬よ。この山を下へ下へ、ずうっと歩いて行くとな、山の外へ出られるそうなのだ」
山で獣達と共に暮らしてきた桃太郎は、人の村の存在を知り、人を見に行こうと思い立つ。母の遺したきび団子と父の遺した打刀を身につけ、心配症の猿を説き伏せて、山の外という新たな世界に飛び出した。
新たな景色や新たな出会いに心を踊らす桃太郎。しかし穏やかなこの村で知ったのは、人の温かさばかりではなかった。
村に、桃太郎に、邪悪な気配が手を伸ばそうとしている。
話数:全10話
ジャンル:アドベンチャー
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象
簡潔に申しますと、友愛と成長を忘れた方の心へ届く大人の文学。私達が子供の頃に親しんだ物語がここにあります。多くの小説作品が私達を観衆として扱い、消費される昨今において、私達の手を取り物語に連れて行ってくれる優しさを持つのです。獣も人も変わらずの営みに、邪悪な影が迫り来るー王道の化け物退治が、青い少年の心の機微や周囲の愛を添えて展開されるこのときめき、まさに基本の桃太郎。穏やかな日常だけでなく鬼気迫る戦闘、戦闘。作者様の場面展開ははっきりと分かりやすいです。そして、子供から大人への心の成長。誰しもが少なからず通った葛藤や困難、読み進めている内に、少年が成長していることにあなたは気付くでしょう。私達がそうであったように。ちょっぴりひねくれた方や、毎日に埋没した方、自分がどんなお話を好いていたか忘れてしまった方に読んで頂きたい。勿論、そうでない方々にも是非読んで頂きたい、そんな優しいお話。