評価:★★★★★ 4.5
「息をするように人を斬る」
刺客の子として生まれた平山小弥太は、父と共に殺しの旅に出た。
念真流という一族の秘奥を武器に、行く先々で人を斬って生き血を浴び、獣性を増しながら刺客として成長していく。
少年期の「小弥太篇」と元服後の「雷蔵篇」からなる、天暗の宿星を背負って生まれた少年の、血塗られた生を描く、第一回アルファポリス歴史時代小説大賞の特別賞を受賞した、連作短編集。その完全版が登場!!――受け継がれたのは、愛か憎しみか――
<スピンオフあります!>
天暗の星~念真流寂滅抄~
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※狼の裔の前日譚(完結済)※カクヨム・アルファポリスにも掲載中。
話数:全146話
ジャンル:
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:江戸
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:R15
犬と狼を分かつものは何か。 それは誇りであろう。 安寧を捨てて、敢えて己の矜持に生きる。 それは痛みを伴う辛いこと。 されどそれしか選べぬ不器用な美学。 江戸時代中期、狼の生き様を貫いた親子がいた。 上からの命令に従い、ただ粛々と殺しの剣を振るう親子。 彼らは他者の命を奪い、血の雨を降らせる。 民草の為と信じるからこそ、その剣に否は無い。 無情に滲む涙を振り払い、一刀をもって悪を断ずる。 その生き様だけを貫き、そんな生き様しか出来なかった。 春の桜も、夏の蛍も、秋の紅葉も、冬の雪もどの色もその瞳には灰色に映っても。 私情? そんなものは置いてきた。 慕情? とうの昔に捨ててきた。 ただ剣に生き、剣に殉ずるという覚悟だけが――父から子へと受け継がれた親子の絆、そして想い。 心して読め、鬼才が綴る剣風の活劇を。 狼の誇りがそこにある。
架空の江戸時代、夜須藩に仕え、代々に渡り暗殺を担う平山家。その当主清記と嫡男雷蔵の死闘を描いた物語。 彼らは己の意思ではなく、藩執政より与えられた密命によって誰と関係なく、知人友人でさえも、秘伝念真流でもって斬り捨てます。 そも金銭を与えられて人を殺すことに名誉なんてありません。ただ政治のために技量と忠節ある武士にそれをさせている。だからこそ、暗殺者平山清記は、普段は人格者であり優秀な代官として領地を治めています。人の道に外れるからこそ、それを大義のためと信じ、誰よりも武士らしくあろうと心掛ける姿。それが欺瞞と理解してなお努力する一人の剣士の生き方は滑稽であり、美しい。 その父の有様を見て育つ、若い剣士雷蔵。息をするように人を殺し生きる宿命持つ彼は、何を人生の答えにするのか。 武士が忠犬をよしとした時代、狼であることを求められた親子の生き様を、祈るように読む良い長編時代小説です。
” ファンタジーばかり読み、時代劇というものに大して興味が無かった当時の自分が、作家様伝いに辿り着いたのが本作。 初見時にはあっという間に読み終えてしまった。 第一章では、旅籠の主人の目を通して語られるため、そう掘り下げられることはないが、主役たちの職と人となりについては少しわかる。 その職の””プロ””である父親について回り、主役は実戦を重ねるうちに成長していく。 読者はまだ見習いともいえる主役の内面を通して物語を追っていけるため、突然に異質の考えに放り込まれて戸惑う事が無い。 全編にわたり感嘆符は見当たらず、殺陣シーンにおいてもそれは同様だ。 そのためにあっさりとした印象を受けるかもしれない。 私見ながら、それが作品の持つ雰囲気を保っていると思う。 静かだが描かれているものは激しい。 どうしてもそこに惹きつけられてやまない。”