朱に染まる華よ、そなたの名は―― 完結日:2017年8月17日 作者:天界音楽 評価:★★★★☆ 4.4 砂漠を背にする小国は、より良い土地を求めて争いを繰り返していた。男は砂漠の部族を束ねる長の弟であったが、武人として身を立てるべく異国へ足を踏み入れた。若き国王の信任を得、戦功の褒美にと下賜されたのは…… 話数:全2話 ジャンル: 登場人物 主人公属性 未登録 職業・種族 未登録 時代:未登録 舞台:未登録 雰囲気:未登録 展開:未登録 その他要素 オリエンタル ヒストリカル メリーバッドエンド 古典恋愛 悲恋 身分差 注意:残酷な描写あり なろうで小説を読む
生きて幸せになることは、きっと難しい。だからせめて、来世でふたり幸せになれたらと。もしかしたら、この物語を読み始めた人たちは、最初からそのことがわかっていたのかもしれない。追っ手に追われて砂漠を越える、きっとそこには死しかない。それでも読み進めてしまうのは、きっとその過程に燃え上がるような心の交わりと、そしていざ別れに直面したときの耽美さを求める気持ちが私たちの中にあるからだ。断言しよう。あなたは嘆息する。この悲恋の物語の美しさに。燃えるような炎の愛の物語に。その炎が燃え尽きたあと、そしてそっと目を閉じて、来世での二人の幸せを願うだろう。
恥ずかしながら、その概念は知りつつもキーワードにある”メリーバッドエンド”なる表現は初見でした。受け手によっては幸福であり不幸にも成り得るが故に、その結末に釈然としない方もいるでしょう。ですが、それこそがこの作品の醍醐味なのです。『朱に染まる華よ、そなたの名は――』タイトルも文章も美しいこの作品は”メリーバッドエンド”の完成形と言っても過言ではありません。 砂漠に果てる二人の若者……死して初めて心が番う、真実の愛物語がここにあります。
何度もレビューを書く手が止まりました。何度も書いては消しました。私はハッピーエンドが好きなのです。しかし、この物語はバッドエンドなのです。私はこの物語が好きです。美しく切なく儚く、この形であったからこそ、誰も触れられない二人だけの永遠の愛へと昇華したのでしょう。胸がしめつけられるような、この美しい物語を表現する言葉を思い付けません。どんな言葉も陳腐で無粋であるように感じたのです。ただ、荒れ狂うような悔しさと切なさと美しさだけが、私の心へ残りました。慈悲なき灼熱と極寒をもたらす世界、砂漠。死を内包する厳しき砂漠にて、咲き誇る赤い花よ。花を手にした二人は幸せであったのか、不幸であったのか。あなたは、どう感じるでしょうか?あなたの心には、何が残るでしょうか?答えはただ、読み手の中へのみ……。