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 高校一年生の冬休み。補習授業を受けるために登校していた少年、日ノ本時雨(ひのもとしぐれ)は、保健室にて同年の少女、篠宮那智(しのみやなち)と出会い、どこか儚い雰囲気を持つ彼女に一目惚れをする。以降、二人は補習授業を一緒に受けることになり、時雨を邪険に扱う那智も次第に心を開いていく。
 しかし、二人のその関係には次第に影が射していく。時雨は重い心臓病を祖父の代から継いでいて、一年前に実の父も同病により亡くしていた。那智はこの時雨の実父の病死に関わる人物で、ジュジュツナギという儀式によって、その身……死肉を食していた。
 那智は篠宮一門という薬師の一家の末裔で、ジュジュツナギは家内だけに伝わる秘伝の業だった。病気で死んだ人の血肉を食し、体内で抗体を作り上げ、自分の身体を他者に切り売りする。そんな儀式である。愛する人の実の父のその身を食していたと知り、那智は悲しみ、失意に沈んで補習授業に行けなくなる。
 一方、那智の侍女たる女性に事の真相を聞かされて、時雨は悟った自分の死期にも構わず、彼女に会いに行く。強い発作が頻発していた彼の身体は重症で、しかし、それでも那智の居場所へ……雪降る街を駆けていく。
 十二月二十五日。夜中のホワイトクリスマス。時雨は那智が入院している総合病院に忍び込み、彼女に思いの丈を伝えて二人の関係は氷解する。しかし、時雨のその容態はもはや限界に迫っていて、彼は意識を失くしてしまい病室内で倒れてしまう。
 返事をしない時雨に向かって那智は必死に語りかける。彼を失いたくはなかった。彼女はそう思っていた。那智は儀式によって時雨の実父の身体を食している。つまり、彼女は彼の同病を治す抗体を持っていた。
 雪が止んで空が晴れ、久しく陽が出た昼下がり。那智は一基の墓石の前で物思いに耽ていた。冬の空の下、そこには二人の男女の姿があり、彼女は愛する人とともに、未来を思い描いていた。


話数:全2話
ジャンル:

登場人物
主人公属性
職業・種族
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時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録

その他要素