評価:★★★★★ 4.5
湘南で暮らしていた凪久(32歳)には、帆波という7歳になる娘がいたが、水難事故で先立たれてしまう。妻の理美は帆波を産むとともに、衰弱して他界。凪久は守るべきものを失い、生きる意欲をなくし、故郷である長崎の離島に帰っていた。父である久次郎の漁を手伝いながら過ごしていたが、喪失感はぬぐえないまま日々が過ぎていた。そんな折、海に立つ帆波の面影を残した少女に出会う。帆波が溺れ死んだのは、伊豆の海。ここは長崎の離島。同じ帆波であるはずがないと知りながら、凪久は少女に思わず声をかけてしまう。
「帆波なのか」
これは全てを失ってから始まる。また失うための物語。
アメブロにて重複投稿しております。
http://ameblo.jp/fellow-again/entry-12122537147.html
話数:全9話
ジャンル:
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象
哀哭の果てに、笑顔を。 絶望の果てに、希望を。 悔恨の涙の先に、安穏を。 非情なる現実に、救済を。 己を呪う心に、許容を。 誰かを想う心に、感謝を。 生ける者に、讃美歌を。 死せる者に、鎮魂歌を。 これは、母なる海を舞台とする『全てを失ってから始まる。また失うための物語』。 そして、様々な人の想いが絡み合って奏でる生者と死者の協奏曲。
著者が海に縁ある人だとは、知らなかった。いや、実際には違うのかも知れないけれど、そう感じ入ってしまうくらいのリアリティを添えて、美しい海を舞台とするこの物語は幕を開ける。だが、それもほんの束の間の事。間も無く始まる、後悔にまみれた主人公の回想。押しては返す波の如く、彼を容赦無く苛《さいな》む過去。その執拗さ、和風ホラーならではの湿度の高さもさることながら、「海」が有する二面性を宿した二つの人格を筆頭に、現在の主人公を囲む登場人物達の配置の妙にも注目したい。そして、文章から立ち昇る潮の香りに咽《むせ》びながら、最後まで読み進めた先。このラストをどう捉えるのか、読み手によって分かれるところでしょう。単純な救いなど存在しないし、主人公自身そんなものを求めているとも思えない。だが、私としてはやはり歩き始めた彼に祝福あれと願わずにはいられない。入魂の一編、お薦めします。
責められたい。 責められて、苦しんでいたい。 自分だけが生きてしまっていることへの戒めとして、自ら十字架を背負う。 主人公のそんな想いは、故郷の海で遂に具現化してしまう。 娘に似た、漣(さざなみ)と名乗る少女。 そして荒波(あらなみ)と名乗る少女。 そこに主人公の家族や幼馴染の玲奈が絡んできて、自らの辛い過去とどう向き合っていくかがこの作品の肝であり、最大の見どころです。 正直最初の3話くらいは妻や娘を失った主人公の辛さがひしひしと伝わってきて、胸が張り裂けるような思いで読みました。 1人になった時、何を思うか。どれ程の胸の痛みか…… 更にこの作品に色付けをする、故郷の描写や人々の心情が本当に素晴らしく、正に【五感で楽しめる】というものでした! 前述では辛さが目立ちますが、読み終わった後の読後感は決して辛いものだけではありません。安心してお読みください。
妻を失い、水難事故で娘に先立たれた本作の主人公、凪久。謝ってもしょうがないのに謝りたい凪久は、実家の故郷、長崎の離島へ帰っていた。娘を奪った海、恩恵を与えてくれる海。打ち上がった海藻から立ち上る、吐き気がするほどの腐臭と爽やかな磯の香り。主人公の叫びたくなるほどの心情が海に映し出されます。だからこそ、この作品は幻想的に受けとめることができるのでしょう。だからこそ、読者は主人公の心情を察し、その喪失感に何も言えなくなってしまうのでしょう。私自身としては、この美しい結末の後に皆様がどう感じるのかとても聞いてみたいと思い、衝動的にレビューを書かせて頂きました。
大切な存在を失った喪失感だったり、自分の無力さを痛感するときでしょうか。事故で妻子を失くした一人の男性が、故郷に戻って漁師の仕事を手伝う日々。そんなある日、海に立つ娘の面影を残した少女に出会う……。これは正真正銘のヒューマンドラマなのです。【全てを失ってから始まる。また失うための物語】う~ん、深い……。地方を舞台にした物語の良いところは、独特の方言が出てくるところですね。でも、ちゃんと翻訳(説明)されているから、安心して読めますよ!!ラストは本気で泣けました……。心が洗われるような気分です。
ただのホラーではありません。もしかしたら、ホラーと言ってはいけないのかもしれません。ジャンルの枠を超えたヒューマンドラマですね。これは、妻を亡くし、娘にも水難事故で先立たれた男の物語。彼は、守るべきものを失い、生きる意欲をなくし、湘南から、故郷である長崎の離島に帰ってきた。父の漁を手伝いながら過ごしていたが、喪失感はぬぐえないまま日々が過ぎていた。ある時、娘の面影を残した少女が、海に立っていたのだが……是非、お読みくださいませ(#^^#)