丹木徳夫は小学校のクラス会を開いた。恩師岡島千春は前日倒れ、足も苦患で皆に萎びた顔を見せたくないと、参加せず。会は和やかに終え、二次会のカラオケで盛り上がる。徳夫は東大医学部を出て、産婦人科の助教授の後、開業。不動産会社社長の赤木善太と別れ、病気で来られなかった狩子猛の屋敷跡にある彼の駐車場で、猛の影に誘われた。靴工場の社長の孫、猛と三軒長屋に住む炭屋の善太とは、四年一組の同級生となり、遊ぶ。相撲大会で猛と八百長を遣り、また週番で校内巡回中、全国標準テスト用紙を失敬した場面を猛に目撃され、トラウマになる。両国高校から東大に入り、助手の時、朋子と結婚。猛は野球に打ち込み、スポーツ推薦で私立高校に合格。大学三年次、工場が倒産し、アパート住まいとなる。プロ野球にスカウトされ、一軍デビューの時、徳夫と弟の武憲を招待し、巨人と戦う。七年後、初詣に出掛ける際外階段から滑り落ち、頚椎損傷して球団はクビ。新興宗教にのめり込む。徳夫は助教授に昇格したが、近所の女院長から医院を継いでと懇請され、引き受けた。母の末期の膵臓癌に気付かず、自責の念に駆られた。猛が線香を上げたいとの電話に、弟の一件で妹達が嫌がっているからと拒絶し、絶交となる。その後、謝罪の電話が入り、年賀状の遣り取りが再開された。
一片のネガを同封して千春に送った。四月にクラス会を開く。母校に着き、マイクロバスから降りた千春は満開に咲く桜の記念樹の下、教え子らに囲まれ、拍手で迎えられた。ネガを焼いて驚き、感激し、現状を受け入れられたと。音楽室でピアノを弾く千春の背はピンと伸びた。翌日、朝刊を郵便受けから引き出すと手紙が落ちた。差出人は家出した弟。内容は謝罪文。当時を振り返り、自分も相手の立場を考えた思い遣りに欠けていたと自省する。済まなかったな、武憲。
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