評価:★★★★☆ 4.3
ナナガ国の新聞記者ウェルド・カーギスは、取材に出掛けようと新聞社のドアを開けた途端、一人の男と出くわした。
男の名は治安維持警備隊第二部隊隊長カーズ。
ナナガ国の嫌われ部隊隊長と、糞野郎なブン屋との、大人げない喧嘩と信念のぶつかり合い。
カーズの折れぬ心は、やがて周囲を巻き込み、現状をたった一つだけ変える。
胸くそ、ハード展開。一応はハッピーエンドです。
本編「琥珀の夢は甘く香る ~アンバーの魔女と瞳に眠る妖魔の物語~」のサイドストーリーです。
同じくサイドストーリー「治安維持警備隊第二部隊~ナナガ国の嫌われ部隊の実情~」の続編です。あくまでサイドストーリーのため、細かい設定の説明を省いております。
話数:全16話
ジャンル:エピック・ファンタジー 異能バトル
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:残酷な描写あり
決して気持ちの良い展開ではない。それなのにページをめくらせる強さを持った作品だ。話が進むにつれて、世の中の欺瞞や甘さが目の前に突きつけられらる。物語でありながら、人間の身勝手さにほぞを噛んでしまうのは、この世界の構造がままならなぬ現実世界を彷彿とさせるからかもしれない。日本でも警察等への風当たりは強いが、この第二部隊に対する民衆の悪感情は相当なものだ。被害者からも加害者からも責め立てられる。国民だけでなく、国や政治家や仲間であるはずの他の部隊からも捨て置かれている。人間ではなく使い捨ての「消耗品」として。都合の良いスケープゴートとして。それでも彼らは戦い続ける。自分のために。仲間のために。家族のために。「消耗品」ではないのだと、自分達は生きているのだと叫ぶ彼らの魂は、あまりにも熱くまっすぐだ。ハードボイルドで泥臭い彼らの生きざまは、あなたの心に何を残すだろうか。
この作品の主人公である第2部隊の通称は『消耗品』、しかし彼らの指揮官であるカーズはどうしてもその呼称を看過することができず、新聞社に抗議に向かい成り行き上から新聞記者ウェルド・カーギスの取材、すなわち妖魔の被害者、あるいは加害者家族の訪問取材に同行することになる。そうして両者遺族の言い分を見聞したカーズは憤激する。気持ちはわかる。しかし、それでも自分たちはあり方を変えることはできない。それは自分たちを人殺しであると、情け容赦なく敵を殺める殺戮者であることを許容しても、自分たちは物ではなく人間なのだと信じていたいから、だからこそ彼は自分たちに対するあらゆる侮蔑を受け流すことはできても、消耗品という言葉だけは許容できなかった。そして、そんな彼らの前に宿縁ある敵手が現れる。これは戦士が絶対に譲れない我を押し通す物語なのだと私は思う。