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 少年は山を登っていた。険しく、道もない山を、体をボロボロにしながら。
 喉は渇き、食事も数日前に取ったきり。山を降りる体力はすでに残されていない。

 だから登る。登り続ける。

 足場代わりにしていた岩が、ボロリと剥がれ落ちる。
 咄嗟にナイフを抜き、岩の隙間にねじ込む。刃は欠けたが、眼下の雲に吸い込まれることは免れた。

 ――己のなかに残っていた雫が、一気に目減りする。

「本当に……あった……」

 月明かりを頼りに登った先。高い山の頂上付近に、古びた城を見つけた。
 蔦が這い永く閉ざされた城門が、少年を迎え入れるように音を立てて開く。

「み、水だ……っ!」

 城の庭にあった池の水に、なにも考えず口をつける。
 喉を潤し城内を見て周ると、一際大きな扉があった。

 ――最後まで残っていた雫が蒸発する。

「オマエが魔神なのか……?」

 そして、扉を開けた先で少年――レオンは願いを叶えるという魔神と出会う。

 『願望の魔神』ヴェラルナーラに願ったものは“運”。

 運命を否定し運を願った少年と、願いを叶える魔神。
 奇妙な共同生活の末に、一体なにを見るのか。


話数:全33話

登場人物
主人公属性
職業・種族
  • 未登録

時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録

その他要素