評価:★★★★☆ 4.4
それは、言葉がすべてを決める世界。
――ちいさな箱庭をゆらした、ちいさな小石の物語。[史記]を言名にもつ少年『生きた歴史書』フヒトは、あらゆるできごとを識っていた。不変を疑うこともなく過ごしてきた日常は、突如転機を迎える。
「――俺を拾ってくれ!」
学都の外れで縋りついてきた美少年に、おもわず手を差し伸べたのが運の尽き。学都の主[調停者]リ=ヴェーダから得体の知れない美少年――推定:来訪者――『アリス』の監査役を命じられたフヒトは、後先顧みない行動力に振り回されることになる。変わるはずのない日常が軋みだす。忍び寄る変革に、少年たちはまだ気づかない。
話数:全115話
ジャンル:
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
今日も変わらない、小さな箱庭(せかい)の中で。登場人物(わたしたち)は、ふと箱庭(せかい)の壁(げんかい)を見る。もしも創造者(かみさま)がいるのなら、登場人物(わたしたち)の存在意義(ここにいるりゆう)とは、創造者(かみさま)の消し忘れた異物(エラー)だろう。存在意義(ここにいるりゆう)は、箱庭(せかい)を揺るがす最初の癌細胞(きっかけ)。それでも登場人物(わたしたち)は欲しい。異物(エラー)が、破壊(へんか)が……そして、調停(あんてい)が。不思議の国のアリスになぞらえつつ、独特の哲学で構成された世界観。物語の全てが深い隠喩であり、一読では掴み切れず、また、読者によって解釈も一定ではないでしょう。見事に歪で、細緻で、美しい不思議な世界。
言葉によってヒトが作られた、言葉が全ての世界。その世界に落ちてきた謎の少年アリスと、アリスを拾ったフヒト。この二人によって、その世界の隠された真実が暴かれてゆく。私が最初に惹かれたのは文章でした。独特な文章によって、気が付けば、この作品に引き込まれていたといっても良いような感じです。独特な世界観、癖のあるキャラクターたちも、この作品の魅力でしょう。役割が全てのキャラクターにあり、誰からも目を離すことができません。最初は世界観を上手く掴めない感じもしますが、読んでいくにつれて徐々にその世界観があらわになっていきます。一度読んだだけでは分からない部分があっても、読み返すと分かっていってさらに深みが増すような、そんな作品です。物語を深く読み込みたい方には、特にオススメです。
作者さんに失礼かと思いますが、私はこの作品のストーリーよりも文章を読んでいます。 これでは少々日本語的におかしいですね。 この感覚を言葉にするのは難しいのですが、何というかとても文章が独特なのです。 詩、と言えば分かりやすいかもしれませんね。 作品タイトルにあるように、「言葉」というモノが全面的に出ている作品となっております。 ですので、綴られる言葉と言葉から溢れる雰囲気などを楽しめるのではないかと私は思います。 むしろそういった点が仇となっている点もありますが、簡単に投げずに読んで頂けたならば幸いです。
言葉には力があると言いますが、この物語の舞台は言葉がすべてを左右する言霊の世界です。 その中で暮らす少年フヒトと、その中に突然落ちてきた少年アリス。 二人は出会い、そのときから動き出す世界の中で隠された真実を追い求めて行きます。 まず特筆すべきは言葉がすべての独特の世界観。精緻な文体で描かれるそれらはとても奇妙で、魅力的です。 そこに存在するキャラクターたちも皆個性的でありつつ物語の上で担う役割や意味がしっかりあり、一人一人に目が離せません。 また、“アリス”の名からわかるように『不思議の国のアリス』の要素が随所に取り入れられており、アリス好きにもおすすめです。 謎が謎を呼ぶ展開、そして世界と二人の行く末が気になって仕方がありません。 読んでみればわかります、特殊で不思議なファンタジーをお求めの方は是非!