彼は運命に翻弄されながらも、決して屈することはなかった。
わずかな先すら見えぬ暗闇のような未来への道を、確かな足取りで歩み続けた――。高校生片山竜也は、真伝流居合術を極め、他の武術にも秀でた若者だったが、その実力を発揮する機会がどこにもなく、他の高校生たちと変わらぬ日常を過ごしていた。
ある日、事故に遭いかけた子どもを助けようとするが、自らが身代わりとなって事故に遭ってしまう。しかし、車両と衝突する寸前、謎の力で竜也は異世界へと召喚され、そこには血だらけとなった瀕死の竜がいた。
瀕死の竜――ヴァルタスという名の紅い竜は魔王への復讐のため、大いなる力を竜也に託して消滅する。その後竜也は、辿り着いた村でセリナ・ラングという娘と出会い結ばれるのだが、住む村を魔王軍に襲われて村は滅ぼされた上に、セリナとも離れ離れとなってしまう。
滅ぼされた村の復讐のため、竜也はリュウヤ・ラングと妻の姓に改める。そして、竜の力と真伝流の剣術を己の武器に、悲しい思いを乗り越え出会いと別れを繰り返しながら、魔王を討つための旅にでるのであった。
しかし、長い闘いの日々の中でリュウヤは“竜の力”を失ってしまい、ただの“人間”へと戻ってしまう。
人の体は脆い上に、その“人”へと戻り、残されたリュウヤの魔力は微弱。
誰もが思った。――リュウヤ・ラングは最早、取るに足らぬ存在となった、と。
だが、竜の力を失っても、リュウヤの剣と心は失われていなかった。
仲間に支えられながら研鑽を積み、技の鋭さは更なる鋭さを増していた。
そして、ようやく一緒となれた家族のために、リュウヤは安息の刻を求めて闘い続ける。“竜に喚ばれた男”の半生。
※ 最終回以降に書いたものは番外編にして投稿しています。
竜に喚ばれた男
完結日:2017年12月31日
作者:下総 一二三
評価:★★★★☆ 3.8
話数:全238話
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:残酷な描写あり
若者らしい爽やかさと戦いのほろ苦さが絶妙に融合した傑作です。主人公・仲間・敵全ての主要な人物が、良い面と悪い面を併せて描かれており、それが更に魅力として際立っています。敵側がここまで魅力的に描かれている作品は、「小説家になろう」において他に知りません。敵側にも重点が置かれているせいか、物語の展開が躍動的で、飽きさせません。しかも、ステータスやハーレムといった嫌悪を抱かれやすい要素もほぼない上、三人称視点なので非常に読みやすい文章となっています。是非ご一読ください。