評価:★★★★☆ 4.2
言葉に宿る音色と力・「コトノハ」を処方する薬剤師・音ノ瀬ことの物語。
四季折々の暮らし、人との触れ合い。
やがて物語は、音ノ瀬一族の核心・暗部へと迫る―――――――――。
誰にも訪れる、心の越境の時。一迅社メゾン文庫キャラ文芸大賞で特別賞を受賞。
カクヨムさんとノベラボさん、マグネット!さんにも掲載させていただいております。
©️九藤 朋2018 .
禁止私自转载、加工 禁止私自轉載、加工
この小説に掲載されている写真、イラスト、文章の著作権は九藤 朋に帰属いたします。許可なく無断転載、使用、販売を禁止します。
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:残酷な描写あり
コトノハ。一見して巫女が操る祝詞とも違う。その価値観の違いに興味を持たされ、のめり込むように読んでしまうかも知れません。広がる季節と、言葉の繋がりの丁寧さや、描写のセンシティブな部分は、この作品の持ち味でしょう。一言で言えば惹かれる。そして、読み進めて行くうちに、この惹かれる対象は人間の内部へと映っていく。そして、概要を見ると、人の暗部へ誘う。色々なコトノハが出て来る。読者なりの言の葉を選ぶことになるが、わたしが選んだはタイトル通り。「傷つくことを恐れて、傷つけないでください」疑うことこそ、人を愛する第一歩であると謂わんばかり。主人公はこの言葉に辿りつくまで、どのような道を歩んだのでしょう。そして、それは誰もが覚えがあるかもしれません。傷つかない人はいない。また、傷つけない人もいない。――コトノハ薬局は、静かに胸にしみわたる。季節と共に生きること。レトロな感動と共にいかがでしょう?
電子の中の世界であっても、私にとってこの作品は、確かに書物である。大切に秋の宵月の下で開いて、また閉じるのが似合うだろう。そして、小説であって、小説を超えて、一話一話に絵画がつくのに相応しい、まるで閉じ込められた標本のようだ。氷つくさだめの標本、炎燃えさかる標本、残響うずまく風吹く標本。幾つもの風景の重なり。それは全て、とある庭に向かって風に酔う間の、たった一夜のできごとのようで、同時に延々と続く悠久の歴史のようでもある。主人公、音ノ瀬ことが口にする「コトノハ」はただの言葉ではなく、処方される言霊だ。どんな苦境に陥っても、人は凛として、背筋を伸ばして立ち向かわなければならない。この作品を読むと、ふとそんなことを想う。あなたは愛する人を守る人だった。いつまでも、これからも。作者の選んだ言葉たちを、じっくり噛みしめるように、読み味わいたい。
なさそうだと思って読み進めていると、意外と近くにこの世界が存在してるのではと、無意識下に植え付けられてしまうほどの緻密さ。疾風のごとく読み進めるも良し、ちびりちびりとスルメ片手に噛み進めるも良し。どちらの楽しみ方もできる作品群だと思います。細かく分かれているので、いつでも読み止めることも、再開することも、お気に入りの場面を何度となく行きつ戻りつすることも(これオススメ)できます。時間的制約がある方は携帯のアラームをセットするのをお忘れなく。
日本は古来より言葉に霊力が宿るとされてきました。本作の主人公は、その言葉の力『コトノハ』を操る由緒ある一族の女当主です。凛とした、けれども優しい主人公を中心に、様々な情愛や事件が絡み、ストーリーが膨らんでいきます。和の薫りにあふれた、繊細な文章と共に。純文学ジャンルですが、重くも読みづらくもありません。各話は程よい分量に収められていて、物語を彩る画像も多く、読みやすく工夫されています。安心して物語に浸って下さい。美しい言葉、優しい言葉、哀しい言葉、狂った言葉……全てが清水のように澄んだ文章で綴られ、読む人の心にきらめきを残しながら流れてゆくでしょう。日本語の持つ力を、堪能出来る物語です。
誠に勝手ながら拙作『【小説家になろう厳選】飯テロ好きの飯テロ好きによる飯テロ好きのための最強飯テロ小説紹介コーナーッッッッ!!!!』にて紹介させていただきました!!居酒屋メニュー&和食メニュー&洋食……と意外とてんこもりな飯テロ作品です!しかし、それだけではなく、陰謀渦巻く異能の名家の権謀術数、シリアスで和風な耽美の雰囲気、とみせかけ意外と素朴で庶民的親しみやすいキャラ達。と、和風耽美のカテゴリでは括れないキャラ造形をしております。和風が苦手、耽美が苦手という方も是非一読ください。意外と庶民的な和風ローファンです。
音ノ瀬ことは若くして言葉に力を持つ一族の長。普通の人でも言葉は人を傷つけもするし救うこともある。けれど、音ノ瀬の言葉はコトノハ。比喩ではなく実際に発現する。コトノハの能力者が散と言えば花が散り、癒と言えば傷が癒える。不思議な力を持つがゆえ重い責任を持ち異端視される。ある日仕事の依頼を受けたことは、楓という、音ノ瀬の血族以外でコトノハの力を持つ少女と出会う。これは音ノ瀬ことと彼女を取り巻く人々を描く物語です。読めばあなたも隣に大切な人がいてくれる事が幸せだと思えるでしょう。自分が日頃発している言葉は人を癒すのか、それとも傷つけるのか。そんなことを考えるようになります。
この作品の魅力を一つだけ挙げるとすれば、何であるか。魅力あるキャラクターか。作者の美意識と語彙に富んだ芳醇な文章か。少し懐古風味漂う世界観か。もちろん、どれをとっても一級品には違いないが、私のお気に入りは何と云っても「言の葉」である。「言の葉」とは言葉である。もっと云えば、「言葉には力が宿っている」という考えのことで、陰陽師も使った呪術の一つだ。音ノ瀬の一族はコトノハを使って人を癒したり、鼓舞したり、傷付けたりも出来る。なんと小説という表現媒体に適した発想であろうか!このコトノハを駆使して繰り広げられる戦闘シーンが静かで美しく、それでいて熱い。この作品でしか味わえない一風変わった異能力バトルは、一読の価値を超える。もちろん、日常を綴った場面も然り。不思議と安心できる。最初に言葉ありき、否、コトノハありきと騙された気持ちで読んでみて欲しい。「なろう」異質の名作と出会える。
なんて美しい文章だろう。最初のページを読んだ時に思った言葉がそれだった。最初の数行だ。数行で、その美しさに引き込まれた。嫌なことがあると物語に逃げ込んでいた幼少期がある私にとって物語は楽園だ。その楽園の中にも上質で甘美な楽園がある。この作品がまさにそれだとおもう。美しさと優しさと儚さとそなえた作品だ。日本語の美しさを詰め込んだような文章がここにある。その美しい言葉で優しい綺麗な世界が作られている。表現のひとつひとつが美しく、この表現が綺麗で優しい世界観を構築しているのだとおもう。作者の語彙力の豊富さ、そしてそれを含めてのこの美しい世界に感嘆しかうまれない。なにか疲れてしまった時、なにか寂しさを感じてしまった時にぜひ手に取って読んでもらいたい作品だと思う。きっとこの作品はそんな少し沈んだ心をひきあげてくれるだろう。
この作品には、そんな清涼感がある。九藤朋という作家の美しい言葉選びが、作品全体の雰囲気を絶妙にまとめ上げているのである。正直なところ、インターネット上でこのように洗練された小説に出会えるとは思ってもみなかった。私はこれまで紙の本ばかり読んでいたのだが、それが勿体無いとさえ感じている。言葉を「処方」するという特殊能力や、先に述べた文章の美しさもさる事ながら、私が敢えてここでお勧めしたいのは、風情や情緒を感じさせるシーンの数々である。現代版枕草子を書くならば、このようにあってほしいと思うほど。花々は色彩豊かに香り立ち、夏の気配は気怠げでどことなく色っぽい。食の描写はまた格別で、これは最早催眠に近い。私は今週末にでも、牡蠣と日本酒で晩酌をしてやろうと計画している。私も作者に「コトノハ」を「処方」されたのかもしれない。牡蠣と酒で一杯やるように、と。
いつもお前は噛みつくようだね、ご苦労様、と思いながら私は受話器を取った。冒頭のこの部分だけで引き込まれました。このあたりは国語科を扱うものの性かもしれませんが、この作品の最大の魅力を冒頭でしっかりアピールできている点、素晴らしいと思います。それでいてこういった表現は繰り返されるとしつこさに辟易するのではという心配もなく、見事な塩梅でまとめられています。なろうの主流である主人公が強くなって無双していく、といった先読みができない分、こういった美しい文章は読むエネルギーを消費します。ですが、この点も早い段階で解消され、各話がほどよい長さであることも相まって、とても計算された作品になっています。雰囲気に浸れる作品。おすすめします。